深見慶子作曲、3の『大空洞』。大空洞で流れます。
中国の史書・水滸伝をモチーフにした幻想水滸伝シリーズのナンバリング3作目にあたる本作。氏族制で伝統を重んじる平原のグラスランドと隣接するゼクセン連邦の間で不和が続くなか、グラスランド側の族長の息子・ヒューゴ、ゼクセン側の女騎士・クリス、そして北のハルモニア神聖国から来た謎多き潜入者・ゲドの三人が、真なる火の紋章をめぐって戦禍に身を投じることになる。前作までの任意に命名できる無口主人公に代わり、名前もバックボーンも確立されて自発的に喋る3人の主人公をメインに据えている。トリニティサイトシステムという同じ出来事を複数の視点からみられる物語構成を取っていて、相容れぬ憎み合い、やむを得ない事情、対立を超えた共闘、プレイヤーの選択による紋章継承者の決定など、重厚なテーマが丁寧に描かれている。シリーズ初の3Dポリゴングラフィックを採用している点、大規模な戦争イベントに代わって最大6名の少数精鋭の戦闘システムを取り入れている点、スキルポイントによる育成要素が追加された点など、前作から刷新された点が多い。例によって108の仲間たちが登場するが、サポートキャラを含めて裏方での活躍がフィーチャーされてミニゲームが拡充されている。総じて作風やシステムを大きく方向転換しつつ堅実にまとめられた仕上がりとなっている。
本作の音楽を担当するのは木村雅彦氏、山根ミチル氏、吉田孝志氏。スタッフロールに記載はないが、深見慶子氏も関わっている。いずれも当時コナミに所属していた作曲家である。このうち木村氏は本作では作曲に加えてクリエイティブディレクターを兼任している。深見氏は前作から続投しているが、それ以外はシリーズ初参加のようで、作風の変化に伴って作曲体制も再編されている。加えてオープニングのみの担当で、主に東北地方や日本の伝統音楽からインスパイアされた音色づくりで知られるインストゥルメンタルソロユニットの姫神が携わっている。オープニングは東洋らしさを存分に活かしたものになっているが、基本的に本作は平原や都市国家、神聖国などが舞台となるため、西洋ファンタジーらしさが強まっている。洋風な民族音楽を中心に、ギターや笛などアコースティック系の聴き心地の良い音色を多く取り入れている。サウンドトラックについては2枚組で収録されたオリジナル盤、一部楽曲を厳選したアレンジ盤、各種デジタルストアでの配信版などが存在する。
大空洞で流れるのがこの曲である。一見ダンジョン名にも聞こえるが、ここはリザード族たちの棲み処であり、道具屋や宿屋などもある集落である。弾みのある木琴の音色で始まり、4秒頃から渋く艶やかなウッドベース、さらに10秒からクラリネットと思しき木管の旋律が加わることで、素朴ながらも謎めいた空気感を醸し出す。10~14秒は木管、15~19秒は木琴、20秒以降はまた木管と交互に主役を務めながら盛り上がっていく構成を取っているのが特徴である。しばらく躍動的な調べを奏でたあと、48秒からやや流れを変えて抑えめな響きを帯びるようになる。とりわけ59秒~1分3秒、1分8~19秒あたりで徐々に音量を上げながら笛が響くさまは印象的で、なかでも1分11秒と14秒でさりげなく装飾音を添えて揺らぎを生んでいるのが気持ち良い。1分17秒からは入れ替わるようにして木琴が最後の間奏を奏で、やがてループに至る。牧歌的だが絶妙にしたたかでミステリアスな一曲である。
この曲とダック村の『あひるぼっこ』(作曲は木村さん・深見さん共作)のどっちを紹介するか悩みましたが、『あひるぼっこ』は素直に素敵な民族音楽なのに対し、この曲は聴いていると不敵な笑みを浮かべられる気がするのが個人的にすごく好みです。『あひるぼっこ』もあわせてどうぞ。