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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1384 『メイン・秋』(つのごうじ/水滸伝・天導一〇八星/PC)

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光栄がおくる歴史シミュレーション・水滸伝より、

つのごうじ作曲、天導一〇八星の『メイン・秋』(仮称)。

季節が秋のときのメイン画面で流れます。上記動画の9:28から11:54まで。

中国の四大奇書水滸伝を題材にした歴史シミュレーションシリーズの第2弾にあたる本作。開始時にシナリオと好漢を選択し、国を乱す奸臣・高俅の打倒を目指すことになる。与えられたタイムリミットのなかで地道に箱庭を発展させたり他勢力と戦ったりして人気を集め、一定の人気に達すれば高俅討伐の勅命を受けていざ成敗、という大まかなゲームの流れは前作と同様である。本作では主に内政に関わる要塞経営のシステムがリアルタイム化し、あちこちで無頼漢たちがせわしなく動き回って要塞が発展していくさまを眺める醍醐味を味わえるようになった。また、登場人物一人ひとりの個性や役割が強化され、無法者、医者、盗賊、果てには色男まで、軍備や人事など幅広いシーンで適材適所で活躍させることができる。シリーズおなじみの人間臭い台詞回しは健在だが、前作よりシナリオ数が減少し、タイムリミットが緩和され、CPUの脅威が薄まるなど、前作ほどの分厚さ・骨太さはなく、全体的にゲームバランスが易化している。システムや歯応えに変化はあるが、引き続き水滸伝の魅力的な世界に浸れる仕上がりとなっている。後にPSやセガサターンに移植された。

本作の音楽を担当するのはつのごうじ氏。主にアニメや特撮などの劇伴作曲で知られる作曲家である。光栄の作品には本作以前にゴータ2(開発はマイクロキャビンで販売元が光栄)での作曲経験がある。光栄内製の作品に絞れば本作をはじめ、後に同じく歴史シミュレーションである三國志6にも携わることになる。本作の音楽は、前作でみられた剽軽な響きを帯びた中華オーケストラ風の路線を概ね踏襲しつつ、コーラスを印象的に取り入れることで一定程度しっとり加減や重厚さが増している。また、エンディングのフレーズを基にして複数の曲で共通の旋律を用いている点も印象深い。サウンドトラックは未発売のため、曲名は便宜上の仮称とする。

季節が秋のときのメイン画面で流れるのがこの曲である。ピアノと二胡の心安らぐ組み合わせで奏でられるヒーリングミュージックで、この曲の旋律も前述の通り例に漏れずメインフレーズを借りている。ピアノは主にアコースティックのものを用いているが、出だしの数音やさりげない伴奏、とりわけ分かりやすいのは1分37秒(上記動画の11分5秒)あたりでポンと響く音色などを中心にして、エレクトリックピアノの温和な音もうまく融け込ませている。主旋律を担う二胡は、終始しなやかに、哀愁を帯びつつも強い生命力を滲ませながら、流れるように奏でられ続け、それがピアノの演奏と綺麗に調和して豊潤な聴き心地を生み出す。上品だが気取ったところはなく、あくまで衆庶の心に寄り添うような牧歌的な響きを帯びた一曲である。

エンディングの曲はまたたいそう素晴らしい出来で、同じ旋律でも後半にかけてぐぐっと盛り上がるさまがとても見事です。あわせてどうぞ。

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