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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1163 『繁栄の街~ルルシオン』(大木優拓/モンスターハンターストーリーズ2 ~破滅の翼~/NS・PC)

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カプコンがおくるRPGモンハンストーリーズより、

大木優拓作曲、2の『繁栄の街~ルルシオン』。ルルシオンで流れます。

モンスターハンターシリーズの外伝であるRPG・ストーリーズの続編にあたる本作。偉大なモンスターライダーの孫である主人公は、祖父を知る竜人の少女・エナと、彼女から託された曰くつきのリオレウスのタマゴとの出会いをきっかけに、やがて世界を揺るがす危機に直面することになる。前作同様、モンハンの世界観を踏襲しつつ、モンスターを狩猟の対象ではなく心を通わせて共に成長する相棒として描いていて、オーソドックスな冒険譚らしい作風が徹底されている。携帯機向けだった前作と比べてビジュアル面が大きく強化され、頭身が上がった色彩豊かなアニメ風のキャラグラフィックや、モンスターたちの活き活きとした挙動、多様な装備などを楽しむことができる。戦闘は引き続き3すくみのターン制コマンドバトルで、武器種の増加や、他のライダーと一緒に戦える共闘要素の追加(作中の主要NPCはもちろん、通信を介したマルチプレイも可能)など、遊びの幅が広がった。据置機水準でのモンハンの世界の王道RPGというコンセプトに忠実な手堅い仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは大木優拓氏、鈴木まり香氏、鈴木克崇氏、宮田裕子氏。大木氏、鈴木女史、宮田氏はカプコンに所属する作曲家である。鈴木克崇氏は自身が代表を務める株式会社ポーリオンに在籍する作曲家である。このうち鈴木女史は前作や本家シリーズでも作曲経験があるが、他は概ね新顔である(大木氏は直前にライズで1曲のみ参加している)。また、宮田氏はこれまでパチンコ・パチスロ関連を手がけていたらしく、家庭用機向けの作品に携わるのは珍しいようである。本作では前作のアレンジ含め数多くの楽曲が書き下ろされていて、主に民族音楽調の力強いファンタジーBGMが揃っている。特定のフレーズを複数の楽曲に散りばめたり、キャラのテーマ曲と出身地の街曲で同じ楽器をフィーチャーして統一感を持たせたりするなど、RPGらしい物語性を意識したサウンドを堪能することができる。サウンドトラックは短いジングルやボーカル曲(日本語・英語両バージョン)も込みで収録されている。

ルシオンで流れるのがこの曲である。物語中盤に訪れる大都市で、商業区や工業区、書士隊と呼ばれる研究組織の支部などが存在する。他の拠点は比較的こぢんまりとした集落が多いなかで、この街は一目瞭然なほど栄えている。そうした華やいだ雰囲気を表現するにあたって、冒頭の第一音からインパクトのあるケルトサウンドで没入感たっぷりに彩る。アイリッシュフルートやアコーディオンフィドルマリンバなどが一緒くたになって明るく楽しく合奏することで、全体としては派手だが、一つ一つの楽器の音色はどことなく素朴な印象を与える。20~27秒には弦楽器、28~36秒には笛と木琴を中心とした見せ場があり、続く37秒からは弦も笛も木琴もぜんぶ乗せで盛り上がるが、45秒で一転して緩やかなムードになるなど、聴いていて心地良く感じられるようなメリハリに富んでいる。とりわけ1分以降でフレーズを反復しながら勢いを蓄えていくパートは非常に快い躍動感に満ちていて、後半にかけても聴きどころ満載な演奏を披露してくれる。都会に足を踏み入れたときの期待と興奮がひしひしと伝わってくる濃密な一曲である。

発売1周年記念に(※記事執筆時)。個人的に2021年の最大の収穫です。他にも本作の街曲は粒揃いで、『伝説の残る村〜ヌア・テ村』(宮田さんの作曲)も雰囲気抜群です。あわせてどうぞ。

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