佐藤仁美作曲、BW2の『凍った街』。氷漬けのソウリュウシティで流れます。
ポケモンシリーズのうち、ブラック・ホワイトの直接の続編にあたる本作。前作から2年後を舞台に、新人トレーナーの主人公は、平穏を取り戻したはずのイッシュ地方で起こる新たな異変に立ち向かうことになる。一部の新エリアを除き、マップは概ね前作と共通だが、辿る経路や順番が異なり、ジムリーダーにも入れ替わりがあるなど、細部に変更点がある。前作ではクリア後まで旧作のポケモンが一切登場しなかったが、本作では新旧問わず登場するようになり、シナリオ面でも異色だった前作と比べて従来寄りの作風に回帰した。主な追加点はパッケージを飾る新しい伝説のポケモンをはじめ、映画撮影のミニゲーム、通信機能を使って街を発展させるジョインアベニュー、協力プレイで挑むフェスミッション、過去作の強敵と対戦できるポケモンワールドトーナメントなどで、寄り道兼やり込み要素が充実している。マイナーチェンジ版ではないメインストリームの作品らしいボリュームを誇る仕上がりとなっている。
本作の音楽を担当するのは一之瀬剛氏と佐藤仁美氏。佐藤氏は当時、一之瀬氏は今もゲームフリークに所属する作曲家である。また、効果音制作で佐藤氏に加えて音楽制作会社スーパースィープの谷口輝雄氏も参加している。一之瀬氏は金銀からORASを除きシリーズ皆勤賞であるおなじみの作曲家で、佐藤氏は主にDP以降の作品に携わっている。本作では前作（作曲は両名＋足立美奈子氏、景山将太氏、増田順一氏）の楽曲を流用しつつ、新規曲・アレンジ曲ともに数多く用意されている。サウンドトラックは前作の未収録曲や、すこし遡ってエメラルドやプラチナの音源化されていない楽曲も含めて収録されている。
ソウリュウシティといえばイッシュ地方北東、ポケモンリーグに程近い場所にある終盤の街で、バージョン別で街並みが大きく異なることが最大の特徴だが、加えて本作では一時的に街全体が凍結されて悪の組織に占拠されてしまう。そうした氷に閉ざされた変わり果てた街で流れるのがこの曲である。ピアノとグロッケンの煌めく高音と、震えるストリングスの伴奏とが絡み合い、背筋さえもが凍るほどの不気味さを生み出す。高音ばかりかと思いきや、11秒や22秒など時折ガクンと重低音が響く場面があり、不吉さに磨きをかける。恐ろしく不穏だが、それでいてどこか神秘的な、心揺さぶるような美しさも見え隠れしていて、残酷ながらも冷艶清美な魅力を持つ一曲である。
オープニングの曲の最初のフレーズがこの曲の引用ですね。オープニングで流れた時点で魅力を感じていたので、それがフル尺になって流れたときの息をのむ感覚はよく覚えてます。『オープニング』（作曲：増田さん、一之瀬さん、佐藤さん／編曲：一之瀬さん）、あわせてどうぞ。
