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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1498 『戦闘!ホウオウ』(一之瀬剛/ポケットモンスター ハートゴールド・ソウルシルバー/NDS)

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ゲームフリークがおくるRPGポケモンより、

一之瀬剛作曲、HGSSの『戦闘!ホウオウ』。ホウオウ戦で流れます。

ポケモンシリーズのうち、ジョウト地方を舞台とする金銀のリメイクにあたる本作。ゲームボーイカラーからDSで蘇るにあたってグラフィックの大幅な向上とシステムの改良がおこなわれていて、新イベントの追加、ギミックの刷新、タッチスクリーン対応、通信機能の拡充など、当時の環境に合わせて惜しみなく調整されている。原作には登場しなかったが世代を経て追加されたポケモンが一堂に会したり、特性やダブルバトル、連れ歩きの概念が標準搭載されていたりして、これまで培ってきたシリーズの要素が諸々揃っている。そのうえ本作ではバトル以外のポケモンの活躍の場として、様々な競技に挑めるポケスロンという遊びが用意されていて、マルチプレイで最大4人まで一緒に遊ぶことができる。また、ソフトに同梱される形でポケウォーカーという白黒ディスプレイ付きの歩数計と連動している。ポケモン歩数計に送って現実世界を歩くことで、経験値やなつき度合い、ワット(ミニゲームを遊ぶためのエネルギー)が溜まる仕組みで、すこしレトロな気分で豊富なおまけ要素を楽しめる。ゲームの中身も周辺要素もしっかり充実した仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは一之瀬剛氏、景山将太氏、橘田拓人氏、佐藤仁美氏、増田順一氏。景山氏と佐藤氏は当時、一之瀬氏と増田氏は現在もゲームフリークに所属する作曲家である。橘田氏はクリーチャーズポケモンの関連会社)に所属する作曲家であり、本作ではアレンジのみ手がけている。このうち一之瀬氏と増田氏は原作の作曲も担当していたベテランで、一之瀬氏は本作の音楽リーダーを務めている。また、景山氏は当時ゲームフリーク移籍したてで本作がポケモンシリーズ初参戦である。本作では多数のアレンジと追加曲が収録されていて、原曲の雰囲気を捉えつつ再解釈したような温故知新のサウンドを堪能することができる。また、作中にはGBプレイヤーというBGMを原作再現音源に変えるアイテムがあり、設計上、原曲そのままではないが景山氏の手によってかなり忠実に復刻されている。サウンドトラックは3枚組で先述のGBプレイヤーの再現音源も含めて収録されている。

ホウオウ戦で流れるのがこの曲である。ホウオウは本作、特にハートゴールド版の顔である伝説のポケモンだが、原作では専用曲はなく、物語上で戦闘イベントは任意攻略だった。本作では戦前の降臨演出も含めて必須イベントになっていて、この曲は高まり切った期待に応えるように迫力満点の純和風×ロックナンバーに仕上がっている。初めは鳳笙や神楽鈴を鳴らして雅楽の如き趣を醸すが、8秒頃から鼓が荒ぶり出すと、ちょうど作中で戦闘画面に突入してホウオウの鳴き声が朗々と響く。17秒過ぎからオルガンの主旋律が入ると、その響きは冒頭の笙を彷彿させるところがある(実は両楽器の発音原理は同じで、笙はパイプオルガンのルーツという説がある)。25~28秒や35~38秒などでギターが存在感を強めてロックらしい勢いとプレッシャーを感じさせるが、39秒から一転して尺八が閑雅で美妙な演奏を披露するようになる。虹の神と誉れ高い伝説のポケモンとしての貫禄をたっぷり魅せつけた後、1分あたりから流れが変わって獰猛で予測不能な印象を漂わせる。ギターと三味線の協演は非常に豪快で、一連のフレーズが過ぎてループ前の1分16秒から急激にテンポが狂うくだりには鬼気が宿っている。本能的に畏敬の念を抱かせる一曲である。

この曲を紹介してほしいというリクエストをいただきました。文字通りプレッシャーを放ってくる曲ですね。