トリック・ノスタルジーがおくる弾幕シューティング、連縁projectより、
JynX作曲、无現里の『エキストラマインド』。3面で流れます。
個人運営の同人サークルであるトリック・ノスタルジーの代表作であり、全編フリーで配信されている連縁project(旧:鏈縁)の第1弾にあたる本作。外界と結界で隔てられた珍妙な国・无現里に迷い込んだ鳳聯藪雨ら数人は、一番最初に最深部に辿り着いた者の願いを叶えるという謎の声に導かれて突き進むことになる。「某巫女さん弾幕STG風弾幕STG」と公言する通り、題名や世界観、全体の雰囲気には結構な程度の近しさがある。アップデートによって題名の表記ともどもゲームシステムが拡張されてシリーズの独自性が目立つようになったが、初期バージョンは見慣れたゲーム性のもとで成り立つ全6面構成の縦スクロール弾幕シューティングに仕上がっている。ボス戦を中心にスペル牌(いわゆるスペルカード)を用いた弾幕の駆け引きがあるが、見栄えの美しさを重視するよりも殺意の高い攻撃手段としての印象が強い。そのため、某巫女さん以上に苛烈で凶悪な歯応えが感じられるが、バージョンアップを経て新システムが導入されたり難易度の選択肢が増えたりして間口が広がった。心地良いノリと攻略し甲斐のあるスリルを兼ね備えた仕上がりとなっている。
本作の音楽を担当するのはJynX氏。トリック・ノスタルジーの主宰であり、本作の企画やプログラム、作画など開発全般を一手に担っている。本作では主にシンセやピアノ、トランペットなど、どこかの幻想郷で聴き覚えのありそうな音色の組み合わせを用いて、エキゾチックでファンタジックな楽曲を取り揃えている。氏にとって作曲は開発中最も苦労する工程らしく、曰く「最初から最後まで全感覚全神経を研ぎ澄ませて」制作しているとのことである。そうして生み出された楽曲群は、雰囲気はたしかに似ているがいずれも盛り上がりのツボを押さえている。作中にはもちろんMusicRoomがあり、各楽曲に対する氏のコメントを読むことができる。サウンドトラックについてはサークルのYouTubeチャンネルで全曲公開されている。
3面「介入者と収穫者 ~Curious_encounter~」で流れるのがこの曲である。電脳の回廊のような場所を進むことになり、その無機質なシーンに見合うようにこの曲はサイバーチックな雰囲気を纏っている。7秒ほど重圧感のあるノイズやシャカシャカと鳴るパーカッションで溜めた後、やたら派手で電子的なシンセ音が加わって曲の流れを引っ張っていく。20秒過ぎから後ろでミステリアスな音階が聴こえるようになると、幻想と電脳の境を行き来するような不思議な空気感に包まれる。52秒あたりでようやく長めのイントロが明けると、どことなくレトロな響きを漂わせながら徐々に神秘と興奮が募っていく。1分24~31秒で主旋律と副旋律の音色を重ね合わせ、一時的にテンポを落として焦らすと、それを合図に曲は新たな展開に突入する。何か異常をきたしたかのような調子で不協和な電子音が鳴り響くようになり、1分57秒からはさらにキーを上げて狂気が加速していく。2分10秒でテンションが頂点に達するが、2分16秒で馴染みのフレーズが入って2分22秒で元通りの軌道に乗ると、どこも異常がなかったかのように平然とループへと繋がる。情緒不安定な一曲である。
非常に好みに刺さります。ところで曲名から思い出しましたが、東方旧作の『エキストララブ』も良いですよね。ひとまず貼っておきますが、いつか個別記事で紹介したいです。