フロムがおくるたすけあいアクション・くりクリミックスより、
星野康太・Ikuya Ichinohe作曲、『ウォッタワールド』(仮称)。
ウォッタワールドで流れます。
フロム製では珍しい緩くて可愛らしい雰囲気を押し出した本作。年に一度だけ開かれるウサギたちの伝統行事・月の宴が、月が逃げてしまったせいで開けなくなったことを受け、ウサギのくりとクリームは月を呼び戻すための試練に挑むことになる。左右で分割された画面で二人の主人公を同時に動かしながら進める縦方向のアクションで、それぞれ4ステージとボス面から成る全7ワールドを攻略していく。一人プレイは可能だが二人プレイを推奨していて、一つのコントローラを左半分・右半分で一緒に持って操作できるよう設計されている。ギミックの連動やタイミング合わせなど、協力必須なアクション要素とパズル要素が充実していて、ステージごとに制限時間が存在するため適度にハラハラした感覚が味わえる。また、助け合いに焦点を当てたストーリーモードのほかに、最大4人まで対戦可能なVSモードがある。そちらでは画面分割なし・強制スクロール形式で罠や得点アイテムが設置されたステージを走り回り、相手を妨害したり得点を奪い取ったりしながらスコアを競う。作風の柔らかさやギミックの丁寧さが相まって二人プレイならカジュアルに楽しみながら達成感を得られる一方で、一人でやる場合は操作の習熟と高度な並行処理能力が試される仕上がりとなっている。
本作の音楽を担当するのは星野康太氏とIkuya Ichinohe氏。Ichinohe氏(情報がすくなく漢字表記が不明)は当時、星野氏は現在もフロムに所属する作曲家である。本作は脱力感のあるキュートな作風を捉えたポップな楽曲が多く取り揃えられているが、メルヘンさのなかにどことなく無国籍な実験音楽らしさが内包されている。弾力のある木琴、陽気なアコーディオン、角笛を彷彿させる奥深い音色、シンセ系のおどけたエフェクトなど、雑多なサウンドが詰め込まれている。サウンドトラックは未発売のため、曲名は便宜上の仮称とする。
ウォッタワールドで流れるのがこの曲である。水に覆われた島を舞台としていて、道中には水場にワニやカバがいたり、ボートを協力して操作したりといったギミックが見受けられる。出だしから気持ち良く拍を刻むギターや木琴が印象的で、そのリズム感はスカを連想させるところがある。11秒で風変わりな効果音を鳴らした後、ピアノとブラスとオカリナのような音色が入って勢いに弾みがつく。24秒にはスチールパンと思しき南国風の響きが加わり、さらに35秒からは草笛にも似た独特な音色が聴こえるようになる。全体的に肩肘張らずまったり聴き進められるが、音色のチョイスゆえに妙ちくりんな印象が絶えず漂っている。特に1分11秒で流れが変わると顕著にその印象が強まり、奇妙な愉悦に浸ることができる。聴いていると好奇心をくすぐられる、というよりは体全身をくすぐられるような一曲である。
なんかこう、しゃっくりを誘発しそうというか、ふわふわする曲ですね。