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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1504 『パニックボルケーノのテーマ』(会田敏樹・浅見亮介/マリオパーティ9/Wii)

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任天堂とエヌデューキューブがおくるパーティゲームマリオパーティより、

会田敏樹・浅見亮介作曲、9の『パニックボルケーノのテーマ』。

パニックボルケーノで流れます。

マリオシリーズのキャラが一堂に会してすごろく風のマップに挑むマリオパーティシリーズのナンバリング9作目にあたる本作。今度のマリオたちは、クッパが盗んだ夜空の星・リトルスターを取り戻すべく大冒険を繰り広げることになる。基本的な雰囲気はシリーズ共通だが、本作ではメインのボードマップのルールが大幅に変更されて遊び心地が一新された。具体的には各々が駒を進めてスターを集める従来の形式から、全員が同じ乗り物に乗って代わる代わる舵を取るなかで各自道中やミニゲームを通じてスターを集める形式に変わった。ライバルかつ運命共同体として足並みを揃えて進むため、極端な進捗の差が出にくくなって接戦が続きやすくなったほか、全体的なゲームテンポが向上した。目玉のミニゲームはすべて新録されていて、本作では以前のようにターン終了時に定期的に入るのではなく、特定のマスに止まったときに発生するイベントのような立ち位置になった。最大4人まで一緒に挑めるメインのパーティモードに加え、初期から全解禁状態で遊べるミニゲームモード、一人用で物語を追うシングルモード、サッカーや落ち物パズルなどのおまけが詰まったエクストラモード、ポイント交換で各種コレクションを楽しめるミュージアムが収録されている。総じて大胆に刷新して新世代のカジュアル感を堪能できる仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは会田敏樹氏と浅見亮介氏。いずれも音楽制作会社T's MUSIC所属の作曲家である。マリオパーティシリーズは前作までは開発元がハドソンだったが、吸収合併・解散を経て本作ではエヌディーキューブに開発が移行した。これに伴って作曲陣にも変化があり、以前は嶋倉一朗氏ら元ハドソン所属の作曲家、直近では八幡浩暢氏ら元ジョーダウンスタジオ所属の作曲家が担当していたなかで、本作ではT's MUSICの二名が新規参戦している。特に会田氏は本作以降も連綿とシリーズに携わることになり、同じくT's MUSIC所属で本作から参戦したミュージックディレクターのCHAMY.伊師(伊師正好)氏ともども、新たなシリーズサウンドを牽引することになる。本作では適度にお茶目で適度にハラハラする彩り豊かなオーケストラ系の楽曲が多く取り揃えられている。ボスバトルの前半後半で曲が変わったり状況に応じたアレンジ違いがあったりして盛り上げる工夫が凝らされている。サウンドトラックは未発売だが、作中のミュージアムでポイントと交換する形で曲名付きでBGMを入手して聴くことができる。

パニックボルケーノで流れるのがこの曲である。冒険の舞台となるボードマップの一つで、灼熱の活火山を登っていくことになる。パニックと銘打つだけあり、中盤からマグマが徐々にせり上がってきて、追いつかれると飲み込まれてスターを失ってしまう危険がある。そうしたなか、手始めに管楽器を主体としてリズムは小気味良いけど音色は分厚く油断ならない雰囲気を目一杯漂わせる。8秒から入る主旋律は独自の軽快さと胡乱さを孕んでいて、その後ろで管楽器がノリノリな調子で伴奏を担ったり、11秒や16秒などで口笛と思しき即興の合いの手が入ったりすることで軽妙洒脱な印象を与える。間奏を挟んで34秒からもう一度同じ旋律をなぞると、今度はラッパの存在感が増していて、37秒や42秒などでみられる例の合いの手の部分も口笛の代わりにラッパが担っている。十分にムードが熟してきたところで52秒から新フレーズに突入し、しばらく濃密なオルガンソウルジャズ風の盛り上がりをみせたあと、1分7秒で潔く締める。その後はループ間際までスリリングな演奏を披露し、1分26~27秒で高らかにラッパを吹くとそれを合図としてループに入る。聴いているとウキウキするが、うかうかしていられない気分にさせてくれる一曲である。

すごく気味の良い曲で、自然としたり顔を浮かべたくなります。