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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1243 『GC ベビィパーク』(永田権太/マリオカート8/WiiU)

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任天堂がおくるアクションレースゲーム・マリオカートより、

永田権太編曲、8の『GC ベビィパーク』。DLCで追加された同名のコースで流れます。

マリオカートシリーズのナンバリング8作目にあたる本作。今度のレースの舞台は陸・海・空のみならず反重力の仕掛けも加わり、壁も天井も文字通り縦横無尽に走れるようになった。シリーズ初のHD対応作品で、背景や質感に至るまで表現力が増したパワフルなグラフィックと、反重力を活かしたダイナミックなコース設計が特徴である。アイテム関連の仕様が見直され、順位の代わりに1位との距離差がアイテムの引きを左右するようになったため、パーティゲーム的な色合いを残しつつ、相対的に運より実力重視のゲームバランスに調整された。新たなマシンタイプとして、オフロードで安定感があるバギーが追加されたほか、前作で一旦廃止されたバイクが復活参戦を果たした。一人用モードに加え、最大4人のローカル対戦、最大12人のネット対戦(世界中の誰か/国内の誰か/特定の相手/大会参加のなかから選べる)なども搭載されている。無料・有料ともにDLCが充実していて、シリーズの集大成らしいボリューム感のある仕上がりとなっている。後に配信済みDLCを全収録したうえで新要素やバランス調整を施した完全版のデラックスがスイッチに登場した。

本作の音楽を担当するのは朝日温子氏、岩田恭明氏、永田権太氏、永松亮氏、藤井志帆氏。永松氏は当時、他は現在も任天堂に所属する作曲家である。このうちマリオカート64からシリーズに携わっている永田氏が本作のサウンドディレクターを務めている。また、永松氏は前々作(Wii)での作曲経験がある。残りはマリオカートシリーズには初参加である。本作ではシリーズで初めて生演奏を採用していて、エレキギターやベース、サックス、トランペットなどを取り入れたビッグバンドジャズ風のノリノリなトラックを聴くことができる。前作に引き続き1位走行中はパーカッションパートが追加されるおなじみの要素や、コースによっては走行場所やラップに応じてインタラクティブに曲が変化する点などが組み込まれている。サウンドトラックはクラブニンテンドーの特典として配布されていた。

2015年4月に配信された有料DLC第2弾のコース群のうち、GC ベビィパークで流れるのがこの曲である。原典はゲームキューブのダブルダッシュにあったコースおよびコースBGMである。遊園地を模した楕円形のコースで、1周10秒程度で走れるほど短いが、代わりに他のコースより多い全7周分を走ることになる。楽曲そのものは、カントリー風味の原曲にギターを追加してロックっぽさを足した、明るくシンプルで反復の多い曲調である。そうしたなか、特殊なコース設計に沿うように、周回を重ねるたびに曲の再生速度が上がる仕掛けが施されている(上記動画では、開始~24秒が1周目/25~45秒が2周目/46秒~1分5秒が3周目/1分6~15秒が4周目/1分16~24秒が5周目/1分25~32秒が6周目/1分33秒以降が7周目)。コース全長が極端に短い分、アイテムが取りやすくキャラが密集しやすくレースが白熱しやすいが、そうしたカオスな状況をまさに曲で表現している。それどころか、曲によってカオス加減に拍車をかけているかのような印象をもたらす。コミカルを通り越して半狂乱の域に達している一曲である。

この曲を紹介してほしいというリクエストをいただきました。1周目の通常音源にするか、インゲーム再現音源にするか迷いましたが、より雰囲気が伝わりやすい後者で紹介することにしました。1周目の音源、それから原曲もあわせてどうぞ。

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