永田権太編曲、8の『ビッグブルー』。
原曲はF-ZEROの『BIG BLUE』(作:石田尚人)で、DLC追加の同名のコースで流れます。
マリオたちがアイテムありギミックありのギャンブル性に富んだ白熱のレースを繰り広げるマリオカートシリーズのうち、ナンバリング8作目にあたる本作。キャラクター、コース数ともにシリーズ最多を誇り、反重力の概念の導入により、水中や空中はもちろんのこと、壁や天井をも縦横無尽に走り抜けることができるようになった。無料のアップデートの他、コースやキャラが追加される有料DLCも二度にわたり配信されていて、シリーズの集大成にふさわしい充実ぶりとなっている。後にDLCをすべて搭載したうえでバトルモードに大幅なテコ入れを加えた完全版のデラックスがスイッチ向けに登場した。
本作の音楽を担当するのは朝日温子氏、岩田恭明氏、永田権太氏、永松亮氏、藤井志帆氏の五名。デラックスでは近藤浩治氏、戸高一生氏、早崎あすか氏、峰岸透氏も参加している。岩田氏と永松氏は当時、他は現在も任天堂に所属する作曲家たちである。このうち永田氏は64からシリーズに携わっていて、本作ではサウンドディレクターを務めている。本作の楽曲はほとんどすべてが生演奏で収録されていて、臨場感たっぷりなオリジナル曲の他、過去作や他作品からのアレンジ曲も数多く搭載されている。サウンドトラックはクラブニンテンドーの特典として配布されていたが、現在は非売品である。
F-ZEROからのゲストコースとして、DLCの追加分で登場したビッグブルーは、原作同様、近未来の水の惑星を舞台としたセクション制のロングコースである。全区間が反重力扱いであり、ショートカットがいくつか用意されていることから、プレイヤーの腕次第でかなり大きくタイムを短縮することができる。そうしたテクニカルなコースを彩るこの曲は、先鋭的なエレキギターと官能的なサックスと好戦的なドラムによるノリノリのフュージョンサウンドである。原曲の疾走感はそのままに、血気盛んなドラムや意気盛んなベースの上を、ギターとサックスがしのぎを削ってソロパートを奏でていくさまは、追いつ追われつのシーソーゲームを彷彿させ、1分2秒あたりで主旋律同士が合流すると、あふれんばかりの格好良さが炸裂する。天井知らずの昂揚感に満ちたエキセントリックでエキサイティングな一曲である。
ただただ痺れますね。演奏しているのはDIMENSIONの増崎さん(ギター)と勝田さん(サックス)、T-SQUAREの坂東さん(ドラム)、それに川崎さん(ベース)という錚々たる顔ぶれです。レコーディング風景と原曲、あわせてどうぞ。