VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1369 『milk』(星野康太/アーマード・コア3/PS2)

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フロムがおくる3D戦闘メカアクション・アーマードコアより、

星野康太作曲、3の『milk』。

「脱出部隊護衛」などいくつかの迎撃系のミッションで流れます。

傭兵となってメカを駆るアーマードコアシリーズのナンバリング3作目にあたる本作。人工知能の管理者による庇護のもと、国家の代わりに企業が相争う地下世界を舞台に、プレイヤーは唯一管理が行き届かない存在、すなわち傭兵となって依頼をこなすことになる。ミッションとアリーナを両軸とする構成と、任務を遂行してメカをカスタマイズしていくシリーズ恒例のゲーム性を採用しつつ、本作では舞台設定を一新して新要素を多数導入している。パーツが新調され、今まで銃器は右腕、ブレードは左腕のように偏って存在した装備について、右腕用のブレードと左腕用の銃が初登場した。また、一部のコアにはエクシードオービットという兵器が内蔵され、エネルギーを消費すれば周囲の敵を自動捕捉して攻撃を加えることができる。戦闘関連だと一部の任務で同行してくれる僚機を雇えるほか、戦闘中に武装を切り離して機動力を向上させるパージが可能となった点が目新しい。戦闘後にはアルファベットでランクが表示されるようになり、アリーナとあわせて長く遊べるやり込み要素に成り立っている。シナリオについては相変わらず黙々と任務をこなすなかでも企業間の思惑や僚機との関わりなどが描かれ、より物語に入り込みやすくなった。難易度や対戦面の調整など多少甘いところがあるが、諸々刷新されて遊びが拡充された仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは一木裕樹氏、齋藤司氏、星野康太氏。一木氏は当時、齋藤氏と星野氏は現在もフロムに所属している作曲家である。齋藤氏と星野氏はACシリーズにはMOAから参戦していてシリーズサウンドの両翼を担っている。一木氏はシリーズの作曲に参加するのは本作が初めてのようで担当分は少数に留まるが、後のLRでメインコンポーザーを務めることになる。本作の音楽は今までのソリッドなテクノサウンドを部分的に踏襲しつつ、女声やコーラス(星野氏の声を加工したもの)を取り入れた耽美的で重層的な作風が目立つようになった。サウンドトラックは1枚組で収録されている。

「脱出部隊護衛」「モノレール防衛」「管理者部隊迎撃」などの迎撃系のミッションで流れるのがこの曲である。護衛対象や防衛ラインを守り抜くために次々と湧き出る敵を迎撃することになる。ぽろぽろと減衰するハープのような音色が響く傍ら、シンセストリングスが穏やかだが粘り強く似たフレーズを奏でることで、安心と不安とが綯い交ぜになった宙吊りの雰囲気を生む。22~25秒でローファイなチェロの如き音色が奏でられ、26~29秒で再びシンセストリングスが鳴り、30秒以降になるとチェロとシンセが短い間隔で代わる代わる繰り返す。43秒あたりから弦楽器が一堂に会し、シンセストリングスは同じ音程を細かく切って発音し、ハープは変わらず零れ落ちるようにして奏でられ、チェロはときどき低音でなだらかに演奏する。59秒でピンとはじくような高音が鳴ると、それを機に曲調に多少の変化をもたらすが、しばらくはあまり大きな差はない。有意な影響が出始めるのは1分21秒頃からで、1分28秒では一際高く澄んだプラック音が響き渡る。しかし長続きはせず、1分43秒ほどでまた馴染みのフレーズに回帰し、以降は完全に同一ではないが近似するメロディーを紡ぐ。緊迫しつつ心ほぐれるような不可思議な一曲である。

最新作の発売記念に。暑いのでミルクセーキとか飲みたいですね。