VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1368 『忍たる陰』(佐宗綾子/ブシドーブレード/PS)

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ライトウェイトがおくる和風格闘ゲームブシドーブレードより、

佐宗綾子作曲、『忍たる陰』。稽古モードで流れます。

ライトウェイトのデビュー作にあたる本作。表向きは鳴鏡心当流の剣術道場、裏では暗殺者集団としての顔を持つ鳴鏡館にて、主人公はその在り方に疑問を持って館を抜け、刺客どもと争うことになる。3Dで自由にステージを動き回れるタイプの対戦格闘ゲームで、初めにキャラだけでなく持たせる武器も選択できる。選べるキャラは6+隠し1人の計7人、武器は刀や西洋剣、金槌など8種類あり、キャラと武器の組み合わせで適性や使える技が異なる。物語を進めるストーリーモード、任意で戦う対戦モード、百人斬りに挑むチャンバラモード、技を練習できる稽古モード、キャラの一人称視点で遊べるオウンビューモードが収録されている。本作の最大の特徴は一撃必殺で成り立つゲーム性で、体力ゲージの類はなく急所をつけば即死させられる。急所以外を攻撃することにも意義があり、腕を斬れば攻撃速度が落ちる、脚を斬れば移動が制限されるなど、部位に応じた機能低下が生じる。武士道を謳うだけあり、名乗りの間や背後から敵を斬るなどの卑怯な行為を取るとバッドエンド直行となる一風変わった制約があるが、裏を返せばそれを実行できるだけの行動の自由が担保されている。独自の緊迫感と珍妙さがある仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは相原隆行氏、佐宗綾子氏、細江慎治氏。いずれも当時アリカに所属していた作曲家である。三名揃って格闘ゲームの音楽制作という構図はストリートファイターEXシリーズなどでもみられる。本作は武士の世界観ではあるものの、時代設定は現代であるためか、楽曲の方向性もモダンなテクノやドラムンベース系を採用している。そこに篳篥や三味線をはじめとする和楽器の音色を取り入れることで、クールでエレガントな雰囲気を形作っている。真剣勝負の空気感を表現するにあたってストーリーモードの対戦時はBGMが流れず、聴こえるのはキャラの声や足音、得物の効果音、環境音などに限られている。サウンドトラックについては、同じくアリカの面々が担当したDRIVING EMOTION TYPE-Sとセットで収録されたものが存在する。

稽古モードで流れるのがこの曲である。稽古ではサブウェポンなしの状態で自由にキャラと武器とステージを選んで戦うことができる。冒頭は尺八を鳴らして、いかにも純和風な印象を植え付けるが、17秒頃で音が途絶えて休止を挟んだ後はドラムンベースへと変貌を遂げる。25秒から三味線の糸を撥先でこするような音を鳴らして徐々に音量を上げ、29秒には折よく野太い掛け声が入ることで、スピーディーなリズム感を維持しつつつも再び和風の色合いが強まる。39~42秒で笛の音が鳴り止むのを合図に、重厚な和のフレーズと手数の多いドラムパートを交互に繰り返すようになり、それを抜けると今度は54秒から電子音と掛け声が荒ぶり出す。すでに相当盛り上がっているところでさらにもう一段階、1分5秒以降はもはや稽古も武士道も知ったことかと言わんばかりの豪快さをみせる。特に1分29~40秒の間はすべてをかなぐり捨てて狂乱するような勢いがあるほか、2分4秒からの三味線の見せ場はカオスである。かと思いきや2分38秒から急に胡弓の滑らかな音色が響いて、美しいような妖しいような独特なムードを醸す。肩慣らしのつもりがいつしか本気になってしまう、過熱する闘争心を見事に表現した一曲である。

ドラムンベースに変わった時点で強烈ですが、それを上回るインパクトを与え続けてくるのが恐ろしいですね。