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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1367 『バトル』(門倉聡/メタルマックス/FC)

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データイーストがおくるRPGメタルマックスより、

門倉聡作曲、『バトル』。通常戦闘で流れます。

戦車を駆って賞金首を狩るメタルマックスシリーズの1作目にあたる本作。大破壊によって荒廃した世界を舞台に、戦車で凶暴な怪物をなぎ倒すモンスターハンターに憧れる主人公の少年は、残念ながら父親に反対されて勘当されてあてどなく旅を始めることになる。発売当時(ファミコン末期)としては珍しかった、非・剣と魔法の西洋ファンタジー、非・勇者の冒険譚、非・一本道の異色な作風が特徴である。仲間を増やすにしろ戦車を入手するにしろ強敵を倒すにしろ、あるいは途中でハンター業を引退するにしろ、やるやらないも、やる場合の順序もプレイヤーに任されている。世界観は殺伐としているが、台詞回しやキャラの個性はどこか剽軽である点が印象深い。本作の核となる要素は戦車であり、生身では到底太刀打ちできない敵も、パーツごとに装備を整えて自分好みに戦車を改造すればまともに戦うことができる。重量、弾倉、パーツの破損の概念や、資金調達の必要性、全滅時の戦車回収の手間なども作中で反映されている。挑戦的な内容でありながら、1作目にしてシリーズの礎と魅力が築かれた意欲作に仕上がっている。後にスーファミ向けにリメイクされた。

本作の音楽を担当するのは門倉聡氏。主にJ-POPへの楽曲提供やアニメの劇伴などを手がける作曲家で、ゲーム音楽を担当するのは本作が初めてのようである。メタルマックスシリーズには本作以降も連綿と携わることになり、音楽の秀逸さがシリーズの強みの一つでもある。ファミコンの作品にしては曲数も曲の長さも充実している。戦闘曲、フィールド曲(徒歩と戦車搭乗時)、各種ダンジョン曲やイベント曲に至るまで、ときに陽気でときに物悲しく、ときに激しく盛り上げるようなバラエティ豊かな楽曲が揃っている。サウンドトラックについては、3の購入特典として付属されたものやメタルサーガの先着購入特典として付属されたものが存在する。

通常戦闘で流れるのがこの曲である。低音域で等間隔で刻むイントロに、バスドラムとスネアドラムによる粋なリズムが組み合わさり、さながら導火線に火をつけるようにしてじりじりと熱を蓄えていく。8秒頃から高めの音域で音色を散りばめてヒートアップし、23秒からはうねりを利かせて強いドライブ感を漂わせる。主旋律の裏では、たとえば28~29秒で三角波が音階を駆け下るなどして勢いを支えている。それとは対照的に、ループ直前の31~33秒あたりでは徐々に音階が上がっていくことで、うまく仕切り直して再び臨戦態勢を整える。熱くて痛快な一曲である。

エンカウントジングル(『インカミング1』)がほしい方のために結合された動画もどうぞ。あとメタルドッグスのシンセがふわふわ響くアレンジがとても好きなのでそちらもぜひお聴きください。

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