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#1320 『太陽と風の中で』(六土開正/大貝獣物語II/SFC)

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バースデイがおくるRPG大貝獣物語より、

六土開正作曲、2の『太陽と風の中で』。前半のフィールドで流れます。

人間と貝獣が暮らすおとぎ話のような世界観が特徴の貝獣物語シリーズのうち、スーファミ向け第2弾にあたる本作。霧に包まれた幻大陸・シェルドラドを舞台に、霧の外の世界で封印されたはずの暗黒魔導師ダークが復活したとの報せを受け、これに対抗すべく地球より新たな勇者とその飼い犬が召喚されることになる。基本的なつくりは前作を踏襲していて、物語の進行に応じた入れ替わりや別行動ありのパーティ制、冒険の手助けをしてくれるすけっとシステム、街づくりを楽しめる我が町システムなどの要素は健在である。新たに現実の時間と連動して作中の仕掛けに影響を及ぼすPLGS(パーソナルライブゲームシステム)が採用されたが、あくまで軽い味付け程度のもので作中での影響範囲は限られている。前作と比べてグラフィックや演出は強化されたほか、ダンジョンの構造が複雑化し、エンカウント率の高さや戦闘バランスのしぶとさとも相まって探索は長丁場になりやすい。調整面の粗はあるがシリーズ独自の味わい深さが感じられる仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは六土開正氏。ロックバンド・安全地帯のベーシスト兼キーボーディストで、本作の発売当時はバンド活動休止中だった。バースデイ製の作品ではおなじみの作曲担当者で、貝獣物語シリーズには1作目から携わっているシリーズサウンドの生みの親である。本作の音楽は前作同様、オーソドックスなファンタジー然としたサウンドのなかにほのかな寂寥感を漂わせつつ、それでもなお希望が感じられるような表情豊かな楽曲が揃っている。サウンドトラックには短いジングル等も含めて収録されている。

前半のフィールドで流れるのがこの曲である。冒頭1秒ほどはフルートが独奏し、次いでストリングスが短く区切ったような音色を奏でると、寂寞としつつ緊張感のある独特な温度感を漂わせる。伴奏に標準的な五音音階を散りばめることで、民謡や中華風にも聴こえる不思議な情緒を生み出すが、15秒から音階を駆け上って滑らかな演奏を披露し始めると、一転して美しい味わいをもたらす。フルートが清らかに鳴り渡り、ハープが優しく寄り添い、ストリングスがゆとりのある音色を響かせることで、冒頭の緊張感からは打って変わって癒されるような空気感を形成する。24秒で再び短く区切った奏法に戻るが、今度はハープが付き添ううえに30秒からフルートを重ね合わせて多層的な旋律を紡ぐため、以前よりも寂寞とした印象が薄れている。38秒からはフルートが高らかに響くなか、ハープが細やかに音階を上り下りして美麗な盛り上がりをみせる。メインとなるフルート、ストリングス、ハープのほかに、ずっと低音を担い続けるベースの音色があり、目立たないながらも曲の流れを支える重要な役割を務めている。素朴な音色の組み合わせで心を打つ一曲である。

前半はもちろん、後半のフィールド曲も同じくらい好きです。後半の『はてしなき大地』もぜひ聴いていってください。

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