テクモがおくるスペクタクルアクションアドベンチャー・アルゴスの戦士より、
高橋洋明作曲、PS2版の『LABYRINTHOS PALACE』。ラビリントス宮で流れます。
古代ギリシャ風の世界観と伸縮自在の神盾を用いたアクションを特徴とするアルゴスの戦士シリーズのうち、PS2向けに登場した本作。古の孤島・アルゴス島を舞台に、闇の眷属・ティターンによって踏みにじられた島を救うべく、神盾を携えた戦士・ゼーンが戦うことになる。固定視点の3Dアクションアドベンチャーで、シリーズの特色であるヨーヨー状の武器・ディスカーマーを駆使した攻守一体で縦横無尽の操作感は健在である。ディスカーマーには3種類あり、遠距離攻撃と敵の捕縛に優れた〈冥〉、中距離の範囲攻撃に特化した〈天〉、近距離主体で追尾性能を有する〈海〉、それぞれボタン入力で多彩な技やコンボを繰り出せる。アクションの豪快さに並んでグラフィックの美麗さも大きな魅力で、実在感のある空や水などの自然描写に加え、神殿や石柱などの象徴的な建築物を通じて古のロマンをたっぷり堪能することができる。世界観の壮大さの割にストーリーは薄めで、カメラワークの影響でやや見づらいところがある一方で、それを逆手に取ってクリア後にディスカーマーがピザに置き換わって台詞が変わるネタ満載のモードが収録されているなど、独自の遊び心とセンスが感じられる。総じて趣のある意欲作に仕上がっている。
本作の音楽を担当するのは桑原理一郎氏、袖岡隆泰氏、高橋洋明氏。桑原氏と袖岡氏は当時テクモに、高橋氏は現在も吸収合併を経てコーエーテクモに所属する作曲家である。このうち高橋氏は本作の主題歌の作曲も手がけていて、歌にはイギリスのソプラノシンガー・Izzy(Isobel Cooper)氏を起用している。また、当時新人だった桑原氏にとっては本作がデビュー作である。本作では映画の劇伴に通ずるような雄大なシンフォニックサウンドが取り揃えられていて、演奏はモスクワ・インターナショナル・シンフォニック・オーケストラが手がけている。ストリングスやハープ、コーラスなどの幻想的な音色はもちろん、ブズーキをはじめとする民族楽器を要所要所に取り入れることで上質な雰囲気を醸し出している。サウンドトラックには主題歌も含めて収録されている。
ラビリントス宮で流れるのがこの曲である。物語後半に訪れる迷宮で、回転する塔が左右に聳え立つ。名前と見た目だけでも十分すぎるほど謎めいた印象が漂っているが、さらにこの曲を通じてその印象を補強している。はじめは甘美な音色を用いて静かに、しかし執拗にフレーズを繰り返し、4秒頃から震えるようにしてブズーキのデリケートな音色が加わると、思わず引きずり込まれそうになるほどに顕著な没入感を生み出す。似通った旋律を反復するなかで、12秒からブラス、22秒からコーラス、25秒からストリングス、30秒からフルートに相次いで出番が与えられることで、聴き飽きないうえにどんどん深みへと誘われるような不思議な感覚に陥らせてくれる。39秒で急激に管楽器が主張を強めると、以降はブズーキが今まで以上に目立つようになる。42~48秒はコーラスとブズーキが、53~59秒はフルートとブズーキが、1分11~27秒は管弦楽器とブズーキが、それぞれまるで異なる糸を撚り合わせるかのように美しく響き合う。そうやって最後まで味わい深く尾を引きながら、やがてループへと至る。とても魅惑的な一曲である。
綺麗だけど、綺麗すぎて恐ろしいような感触のある曲ですね。