テクノスジャパンがおくる3Dパズルアクション・ジオキューブより、
飯塚千晶・上原麗子・片岡清美作曲、『KI.RIN』(仮称)。KI.RINとの対戦時に流れます。
上記動画の50:28から。
PSのハード発売直後の作品として、くにおくんシリーズで知られるテクノスジャパンが開発した本作。立体的な見下ろし型の落ち物パズルで、様々な形状のブロックを、ピットと呼ばれる穴状のフィールドに敷き詰めて、縦横万遍なくフェイス(層)を揃えることで消していく。クリア条件は指定回数フェイスを揃えること、ゲームオーバー条件はブロックが最上層まで到達することで、対人戦では先にクリア条件を満たしたほうが勝ちである。CPUと連戦するVS.CPUモード、ラウンド制で途中から始めることも可能な全99面に挑むFINITEモード、ひたすらブロックを消し続けるINFINITEモード、2P対戦モード、計4種の遊びが収録されている。2Dではなく3D、そのうえ見下ろし視点ともあって、ブロックを立体的に回転させて適切に配置する判断力に加え、奥に隠れて見えなくなったブロックも考慮に入れて管理する空間把握能力や記憶力が問われる。操作やルールへの慣れを要するが、その分コンフィグ要素が充実していて、操作の割り当ておよびテスト、ピットやブロックの見た目変更など、いろいろ自分好みに試すことができる。総じて手強くも堅実な仕上がりとなっている。
本作の音楽を担当するのは飯塚千晶氏、上原麗子氏、片岡清美氏。いずれも当時テクノスジャパンで活動していた作曲家である。パズルゲームという括りでは本作以前にくにおのおでんで三名とも共作した経験がある。本作では思考を捗らせてくれる淡泊なテクノ系やハウス系を中心とした楽曲が取り揃えられている。VS.CPUモードにおいて8人いるCPUそれぞれに専用のテーマ曲が用意されていて、基本的には上述の通りテクノ系だが、ファンタジー風味やSFチックなどの味付けがなされている。特に作中で語られることはないが何か背景設定がありそうな曰くありげなムードを形成している。サウンドトラックは未発売のため、曲名は便宜上の仮称とする。
KI.RINとの対戦時に流れるのがこの曲である。KI.RINはVS.CPUモードで2番目に戦う相手で、深紅の装束に身を包んだ東洋人の剣士である。感傷的な響きを目一杯湛えたギターと笛のイントロで始まり、9秒(上記動画の50:37)で銅鑼の音が錚々と鳴り渡ると、それを境に打楽器とベースのリズムが勢いづく。冴え冴えと響く笛の主旋律に、低音部で刻まれるベースや、きらきらと繰り返しオスティナートを担うシンセベル系の音色を添えることで、惚れ惚れとするような耳心地の良さと、適度に集中力を高めてくれるようなスリルを感じさせる。イントロ後しばらくギターは息を潜めるが、46秒(51:14)で再びコーラスを随えながら合流すると、その流れに乗って55秒(51:23)でサビに達する。ここ一番で高らかに澄んだ音色を奏でる笛、同じく高めの音程でテンションを支えるコーラス、下のほうで粘り強く支えるギター、そのどれもが素晴らしく調和するなかで、さらに満を持して1分10秒(51:38)あたりから二胡と思しき音色を加えることで、栄華の極みへと至る。ややあって1分28秒(51:56)で銅鑼が打ち鳴らされると、また冒頭と同様にそれを境に変化が生じ、静かに鮮やかに締め括ってループへ突入する。優美高妙な一曲である。
絶品ですね。とても好みな音使いです。