VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1404 『Go on a goanna』(qp/GUNPEY-R/PSP)

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Q EntertainmentがおくるMusic×Puzzle・GUNPEYより、

qp作曲、PSP版リバースの『Go on a goanna』。スキンがEstrayのときに流れます。

縦10×横5マスのフィールドで下からせりあがるパネルを繋げて消すゲーム性で知られるGUNPEYシリーズのうち、DSより数か月遅れで並行展開しつつ別作品としてPSPに登場した本作。上下で入れ替えることのできるパネルに描かれた線状の模様(ライン)を左右両端で繋がるように配置することでパネルを消していく。基本的なルールは過去作と同様で、パネルが10段目より上へ達するとゲームオーバーとなる。DSで追加されたブレイク(パネルを消した際、上方にあるパネルが消した分だけ下がるルール)も搭載されている。本作で目新しいのは、同じくQ Entertainment製のルミナスシリーズでおなじみのスキンの導入である。背景・操作音・BGMがセットになったカスタマイズ要素のことで、スキンを通じて音楽とパズルの一体感を味わうことができる。収録されているモードはコンティニューなしのノンストップで全40面を攻略するチャレンジ、入手したスキンで遊ぶシングルスキン、同時進行で二つのスキンを切り替えるダブルスキン、拡大されたフィールドで挑む10×10モード、通信プレイに対応したVSモード、制限時間内で高得点を目指すタイムアタックである。中毒性のあるパズルとシンクロした音楽とをまとめて楽しめる仕上がりとなっている。

本作の音楽は前述の通りスキンという形で実装されていて、各スキンの作曲には気鋭のアーティストを起用している。具体的にはh ueda氏、Kakera-Kaze、qp氏、Nicole氏、Takemoto氏、USCUSである。h ueda(ウエダエイイチ)氏はミニマル系の作風で知られるサウンドクリエイターである。Kakera-KazeはAO氏とNON-U氏から成るアンビエントユニットである。qp氏はテクノを中心にDJから多様なコラボまで幅広くこなすミュージシャンである。Nicole氏はデトロイト出身のロックアーティストで、feat.扱いで1曲のみ参加している。Takemoto(竹本光憲)氏は本作のサウンドエンジニア兼プログラマーで、作曲にも1曲のみ参加している。USCUSは野外フェスなどを運営するanoyoの一員であるDJ BANZARのプロジェクトで、ライブや映像作品などを手がけることで知られる。本作ではそれぞれ持ち前のセンスを発揮し、緻密なビートを用いたり実験的な音色の鳴らし方をしたり、ときにはボーカルを取り入れたりして、陶酔感あふれるサウンドを形作っている。サウンドトラックは未発売だが、曲名とアーティストは作中で明かされている。

スキンNo.08「Estray」のBGMとして収録されているのがこの曲である。このスキンではメルヘンチックな影絵風の背景と、ピアノの鍵盤の上を動物たちが行進する様子が描かれる。操作音はタンバリンを想起させ、パネルがせりあがるたびに呼び鈴のような鋭い音色が響く。ラインを繋げて消すと動物たちが鳴き声を上げたり飛び上がって喜んだりする。冒頭5秒ほどは雨音のような効果音が聴こえるが、ピアノが入ると雨は止み、以降はさながら通り雨の如く時折聴こえる程度に留まる。最初から最後までほとんど休みなくリズミカルにピアノとパーカッションが鳴り続ける点が特徴である。47秒や1分13秒などでようやく一息つくかと思いきや、直後に何事もなかったかのように演奏を続ける。音色の散りばめ方は一見すると出鱈目で無秩序な即興のように感じられるが、本当に出鱈目であるなら生じ得るはずの不気味さや気持ち悪さはなく、むしろ聴けば聴くほど耳に馴染んでゾーンに入っていく感覚を味わえる。聴き心地としてはラグタイムに似ていて、聴いているうちに即興ではなくあらかじめ設定された自動演奏のほうが近いのだと気付かされる。実際、曲の終わりの3分2秒では自動演奏装置が止まったかのような効果音が響く。頭が冴える一曲である。

曲名のgoannaはトカゲのことですが、オーストラリア方言で俗にピアノを意味するそうです。