VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1403 『龍滝の滴』(小林翔・近藤嶺・望月景介/鬼武者/NS・PS4・XOne)

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カプコンがおくる戦国サバイバルアクション・鬼武者より、

小林翔・近藤嶺・望月景介作曲、リマスター版の『龍滝の滴』。

東天の滝の近くで流れます。

戦国乱世で空前絶後の剣戟を楽しめる初代鬼武者の約18年越しのリマスターにあたる本作。桶狭間の戦いから1年後、明智光秀の甥にして流浪の若武者・明智左馬介は、にわかに台頭する異形の怪物・幻魔に対抗すべく、鬼の籠手を宿した鬼武者となって戦うことになる。物語や基本的なシステム、カメラが固定視点である点などはオリジナル版と変わらないが、グラフィックが高解像度化して16:9のワイド画面に対応するようになり、日本語音声が新録された。また、新要素のなかでも最も影響力があるものとして操作方法が拡充された点が挙げられる。従来の方向キーで動かす操作方法(いわゆるラジコン操作)に加えて、スティックを用いた直感的でアクションとの相性が良い操作方法が追加された。初期状態から低難易度が選択可能になった点と相まって遊びやすさが向上した。そのほか、細かなやりこみ要素や隠しミニゲーム、新衣装なども収録されている。革新的な進化というほどではないがオリジナル版が現代向けに復刻された仕上がりとなっている。後にSteamに移植された。

本作の音楽を担当するのは小林翔氏、近藤嶺氏、望月景介氏。いずれも音楽制作会社T's MUSICに所属する作曲家である。このうち近藤氏がリードコンポーザーを務めていて、氏は同じくカプコン製で戦国時代をベースにした戦国BASARAシリーズの作曲者としても馴染み深い。オリジナル版は佐村河内守氏(ただし新垣隆氏がゴーストライターとして実際の作曲を手がけていた)を起用していたが、本作ではサウンドが一新されていて、オーケストラ×和楽器というコンセプトを踏襲しつつも再構成されている。基本的にはアレンジ等ではない新曲だが、なかにはオリジナル版に曲調を似せてつくられたものもある。サウンドトラックは一部楽曲を厳選収録したものが限定盤に同梱されている。

東天の滝の近くで流れるのがこの曲である。ここでは色褪せた鳥居や鬱蒼と茂る自然、轟々と流れ落ちる滝がみられる。オリジナル版の『滝岨 TAKISOBA』は和風の琴と洋風のハープを織り交ぜ、滑らかに音階を行き来するグリッサンド奏法を多用した耳心地の良い曲調が印象的である。対してこの曲は同様に琴とハープを用いつつ、神秘的なピアノやまろやかなオーボエを思わせる音色を組み合わせていて、オリジナル版と雰囲気は似ているものの一味異なる趣がある。しっとり静かに各楽器が演奏する傍ら、3~4秒や9~10秒、17~18秒など合間合間にさりげなくチリンチリンと鈴の音を響かせることで、涼やかでミステリアスなムードを高めている。特に40秒以降で主旋律にコーラス風の甘美な音色が加わると、その出だしにあたる40~44秒において後ろのほうで木霊するように鈴が鳴る点が味わい深く、音量は控えめでも曲を構成する要素として彩りと興を添えている。56秒ですこし流れが変わってピアノがしきりに音階を駆け下った後、1分4秒でストリングスオーケストラが参戦する。オーケストラは壮大な響きを帯びているが、あくまで労わるような穏やかな調子を維持し続け、やがてループへ繋がっていく。適度に謎めいていて程よく癒される一曲である。

聴いていると心がほぐれるけど好奇心が刺激されるような不思議な感触がありますね。『滝岨 TAKISOBA』もあわせてどうぞ。

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