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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1433 『砂の泣く先へ』(柳川和樹/ソフィーのアトリエ2 ~不思議な夢の錬金術士~/NS・PS4)

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ガストがおくる錬金術RPG・アトリエより、

柳川和樹作曲、ソフィー2の『砂の泣く先へ』。夜の久遠の幻砂で流れます。

錬金術士の日々の奮闘を描くアトリエシリーズのうち、副題に不思議を冠する作品群の第4弾にあたる本作。故郷を離れて旅する錬金術士・ソフィーは、人形の相棒・プラフタとともに立ち寄った大樹で謎の渦に吸い込まれ、気付けば様々な時代の人々が集う夢幻世界エルデ=ヴィーゲに辿り着いて懐かしくも新しい出会いに巡り合うことになる。三部作で完結したと思われた不思議シリーズのなかで、本作は1作目(ソフィーのアトリエ)と2作目(フィリス~)の間の出来事を描く形でソフィーが主人公として続投している点が特徴である。舞台設定の特殊性を活かし、今まで掘り下げ切れていなかった過去を生きたキャラとの交流や成長の過程が描写されている。肝となる調合システムは盤面にピースを配置するパネル調合を踏襲していて、配置の難易度が上昇する分、強力なアイテムをつくれる上級者向けのパネルも存在する。戦闘システムは前衛と後衛で3人ずつの最大6人まで連携可能なマルチリンクターンバトルを採用していて、戦闘そのものがスピーディーであるうえに探索とシームレスに繋がることから総合的なゲームテンポが向上した。探索では一部のフィールドに天候操作を伴うギミックがあり、天候次第で道が拓けたり採取できる素材が異なったりする。総じて温かみがあって快適な仕上がりとなっている。後に一日遅れでSteamに登場した。

本作の音楽を担当するのは阿知波大輔氏、阿部隆大氏、柳川和樹氏、矢野達也氏。阿知波氏と柳川氏はフリーランスの作曲家、阿部氏はロックバンド・ACRYLICSTABのギタリスト、矢野氏は音楽制作会社LOVE ANNEXに所属している作曲家である。阿知波氏、柳川氏、矢野氏はかつてガストに在籍していたことがあり、阿部氏もアトリエシリーズにはよく参加していて、四名とも本作含め不思議シリーズには皆勤賞である。このうち矢野氏は主題歌1曲、阿部氏は重要ボス戦1曲のみの担当で、阿知波氏と柳川氏が大部分を手がけている。リコーダーやアコーディオンなどを積極的に取り入れた牧歌的なサウンドは本作でも健在で、今回は一際ファンタジー色の強い夢幻世界を舞台とすることからコーラスやストリングスの麗らかな音色が印象的に用いられている。サウンドトラックはボーカル曲含め3枚組で収録されているほか、アレンジや未使用曲などを収録したアルバムも存在する。

夜の久遠の幻砂で流れるのがこの曲である。久遠の幻砂は物語後半から終盤にかけて訪れることになる砂漠地帯で、昼間には『砂の嗤う先へ』という別アレンジが流れる。『砂の嗤う先へ』はバグパイプアコーディオンシタールを散りばめた派手でエスニックな曲調を特徴とするが、夜間は一転して静まってチェレスタとピアノの切なげな音色を軸としている。チェレスタとピアノの静謐な組み合わせが曲の大半を占めるが、2~3秒で早くも姿を見せ、その後も13~16秒などで時折掻き鳴らされるシタールが独特な異国情緒を添えている。50秒頃でチェレスタが抜けると、ピアノの後ろでひっそりざわめく効果音が聴こえ始め、さらにちょうど1分で沈み込むように低いソの音を奏でて寂寞とした印象を強める。効果音が途絶えた後はしばらくピアノが独奏するが、1分32秒で遅れてチェレスタが合流し、余韻をたっぷり利かせながらやがてループへと至る。蜃気楼のように儚く虚しく、けれど心くすぐられる一曲である。

2023年はしっとりめに締めましょう。……と言いつつもう一曲、『砂の嗤う先へ』もあわせてどうぞ。砂漠は昼夜で温度差が大きいものですが、それが曲によく落とし込まれていますね。良いお年を。

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