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#942 『残香を追って』(柳川和樹/ソフィーのアトリエ ~不思議な本の錬金術士~/PS3・PS4・PSV)

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ガストがおくる錬金術RPG・アトリエより、

柳川和樹作曲、ソフィーの『残香を追って』。反魂の間で流れます。

錬金術をテーマにしたアトリエシリーズのうち、17作目にして新章となる不思議シリーズ第1弾にあたる本作。祖母を亡くして以来、一人で錬金術のアトリエを経営する少女・ソフィーは、本の姿をした記憶喪失の元錬金術士・プラフタと出会い、彼女の記憶を取り戻すべく奮闘することになる。それまでの黄昏三部作から世界観を一新し、長閑な田舎町での日常と冒険を描いている。調合はパネルに素材を配置していくパズル式のシステムで、投入の順番やパネルの埋まり具合はもちろん、使用する錬金釜の種類も結果を左右する。戦闘はターン制コマンドバトルで、追撃や連携が発生しやすいスピーディーな展開が特徴である。時間の概念については、曜日や昼夜が存在するものの、日数制限や期間限定などの制約は甘めに設定されている。中盤以降の衣装チェンジやドールメイクといったカスタマイズ要素も充実していて、新シリーズ開幕にあたって緩やかでとっつきやすい仕上がりとなっている。後にSteamに移植されたほか、完全版のDXが登場した。

本作の音楽を担当するのは浅野隼人氏、阿知波大輔氏、阿部隆大氏、柳川和樹氏、矢野達也氏。浅野氏、柳川氏、矢野氏は当時ガスト(コーエーテクモ)に所属していた作曲家で、阿知波氏は元ガストのフリーランス、阿部氏もガストタイトルでの作曲経験がある外部のコンポーザーである。このうち矢野氏は入社後初の担当作であり、阿知波氏と柳川氏共々、不思議シリーズ三部作すべてに参加することになる。本作では牧歌的な温かさのある民族音楽調の楽曲を中心に揃っていて、街やフィールドの昼夜で同じ曲の別アレンジが流れるほか、通常戦闘曲は敵とのレベル差に応じて複数種類用意されている。サウンドトラックは主題歌を含めて3枚組で収録されたものと、主題歌以外の挿入歌も網羅したボーカル盤が存在する。

反魂の間で流れるのがこの曲である。特定のイベントをクリアした後、既存の採取地の最深部から特定の曜日のみアクセスできる、一種の隠しダンジョンのような立ち位置で、その仰々しい名前が示す通り、昏く物々しい場所である。徹底的にシリアスな雰囲気に合わせて、イントロから重圧的なピアノとシンバルが響き、そこにエキゾチックなシタールやコーラス、やけに焦燥感を煽るフルートが加わることで、ますます張り詰めた緊張が走る。50秒でさながらオーケストラヒットのようにピアノの打鍵音が轟くと、その勢いに乗ってさらに迫力に磨きがかかる。裏で鳴る木琴の伴奏が素朴な印象を与えつつも、全体としては壮大で禍々しい曲調に仕上がっていて、1分22秒で尾を引くような余韻を伴いながらループへと突入する。禁断の地に足を踏み入れたような感覚をありありと伝える一曲である。

夜間はピアノとコーラスが淡々と流れ続けるアレンジで、ずっと同じ調子ですが、これはこれですごく雰囲気が出ていますね。『残香を追って~夜~』、あわせてどうぞ。

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