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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1706 『エドの街』(青島伸幸・笠谷文人/ファリア 封印の剣/FC)

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ゲームアーツがおくるコミカルファンタジーRPG・ファリアより、

青島伸幸・笠谷文人作曲、『エドの街』(仮称)。エドの街などで流れます。

ゲームアーツの初期のオリジナルRPGとして、主にゲーム雑誌の刊行で知られるハイスコアメディアワークが販売を手がけた本作。神話の時代に封印されたはずの魔導士レビュアが復活し、お姫様がさらわれてしまったことを受け、国王の布礼を見た旅の女戦士が救出に向かうことになる。一見オーソドックスなアクションRPGで、フィールドの探索はトップビューでマス目上を移動する通常のRPG形式、戦闘は同じくトップビューで剣や弓、魔法を使い分けるアクション形式を取っている。作風はカジュアルだがレベルデザインやシステム、キャラ設定などに癖がある。マップが迷いやすく見通しが悪い点に加え、道中の敵は全体的に強いうえに後半に特定のアイテムを入手するまで見えない敵が多く出現したり、戦闘から逃げると確率で所持金や経験値が減る仕様があったりする。また、必ずしも町に主要な施設が揃っているわけではないうえに各地の店で取り扱う品に偏りがあり、単に品揃えという観点だけでなくこちらから売却する際に買い取りに応じてくれる品にも制限がある。一方でグラフィックの質感やロケーションの豊かさなど冒険を彩る雰囲気はよく出ている。総じて快適ではないが独自色がある仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは青島伸幸氏と笠谷文人氏。いずれも当時、笠谷氏が率いる音楽制作会社メカノアソシエイツに所属していた作曲家である。ゲームアーツ製の作品にはシルフィードをはじめ両名がタッグで作曲を手がける例がいくつかみられる。本作ではハイファンタジー調のカラフルな冒険活劇に見合った前向きで剽軽な楽曲が多く取り揃えられている。シリアス成分は控えめで明るめな曲調が中心だが、澄んだ悲愴感のあるフィールド曲、適度なテンションのある戦闘曲やダンジョン曲など、場面によってきっちり作り分けられている。サウンドトラックは未発売のため、曲名は便宜上の仮称とする。

エドの街と砂漠の村テグザで流れるのがこの曲である。エドは開始直後の最初の街で、王城の南西に位置して宿屋や商店、病院など主要な施設が揃っている。テグザは中盤に立ち寄る村で、武器屋の品が性能的にも値段のうえでも高い。汎用の町曲の一つと言えるが、開始直後に聴くこともあって本作全体の作風を快く印象付けてくれる。ズンチャカ刻むアップテンポなリズムの上をお気楽で能天気なメロディーラインが駆け抜けることで、肩肘張らずに冒険を目一杯楽しもうとする意気込みが感じられる。終始、非常に親しみやすく愉快な響きがあるなかでも、7~10秒で長めに音色を鳴らしてみたり、ループ間際の22~23秒で音色を重ねて厚みを持たせたりして抑揚をつけている。とてもポジティブで上機嫌な一曲である。

こういうとにかく明るい感じの曲ってファミコン音源と親和性あって良いですね。