Bethesda Game StudiosがおくるオープンワールドRPG・Falloutより、
Inon Zur作曲、4の『Rebuild, Renew』。Diamond Cityなどで流れます。
核戦争後の荒廃した世界を描くFalloutシリーズのうち、ナンバリング4作目として登場した本作。戦前に核シェルターに入り、コールドスリープ中に配偶者を殺害された主人公は、変わり果てた戦後のボストンの地で復讐を誓うことになる。退廃的な様子を見事に表現した茫漠たるオープンワールドの世界が特徴で、メインシナリオ以外にも武器を改造したり街をつくったりといった寄り道要素も充実している。RPGとしてだけでなく、FPSやハクスラや街づくりシム的な遊び方も可能で、その自由度の高さが何よりの魅力である。オリジナルの英語版の他に日本国内向けに翻訳版が出ているが、そちらは誤訳もすくなくない。
本作の音楽を担当するのは主にInon Zur氏。ゲーム中のラジオで流れる曲に関しては、古き良きアメリカの歌曲や有名なクラシックが用いられている。Zur氏はイスラエル出身の作曲家で、映画やテレビの劇伴作曲に加え、ゲーム音楽も手広く手がけている。ことFalloutシリーズについては、外伝作のTactics以来継続的にシリーズに携わっていて、氏にとっての代表作でもある。本作の壊れた世界を描き出すにあたって、ピアノを重視したアンビエント調の楽曲が多く揃えられていて、生のピアノの音と電子ピアノの音とが組み合わさることで、沈鬱でありながら瑞々しくもある雰囲気をつくりだしている。その完成度の高さから、BAFTAなどいくつかの賞において音楽部門でノミネートされた。サウンドトラックはデジタル配信されたほか、数量限定でビニール盤も発売された。
戦後ボストンの最大都市であるDiamond Cityは、現実世界のボストンのランドマークであるフェンウェイ・パークの跡地につくられた街である。そこで流れるこの曲は、ゆっくりと木霊するように奏でられるピアノイントロから始まり、そこから徐々に、物静かで物憂げな空気感を保ちつつ、ストリングスが加わることで盛り上がっていく。2分あたりではアイリッシュやケルト音楽を彷彿させるイリアンパイプスの音色を取り入れることで、民族音楽特有の独特な郷愁を誘う。最初から最後まで淡泊な曲調が続くが、その静けさのなかに息をのむほどの美しさを湛えている、そんな一曲である。
活気に満ちているけど未だ抗いようもなく退廃的、という雰囲気が曲からよく伝わってきます。聴いているとすっと心が落ち着きますね。