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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#279 『偽書ト世界』(岡部啓一/SINoALICE ーシノアリスー/iOS・And)

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スクエニとポケラボがおくるファンタジーRPG・シノアリスより、

岡部啓一作曲、『偽書ト世界』。タイトル画面で流れます。

DODやニーアで知られるヨコオタロウ氏が原作およびディレクターを務めるスマホ用作品として登場した本作。自らを描いてくれた作者を復活させるべく、不思議の国のアリスや白雪姫など、童話の主人公たちは願いの成就に向けて自分以外のすべてを滅ぼすことになる。各国に伝わる童話や御伽噺を題材に、物語のなかに生きる少女たちの破局的な願いを赤裸々に綴ったダークファンタジー調の作風と、オムニバス形式で絡まり合う少女たちの思惑が紡ぐ陰鬱にして重厚、ラディカルにしてエキセントリックな世界観が特徴である。戦闘システムはサイドビュー型でオートモードにも対応したリアルタイムバトルで、ソロプレイのみならずギルド対抗戦なども存在する。テキスト重視で読み応えのある濃厚な仕上がりとなっている。後にPC版(DMM GAMES)やブラウザ版が登場した。

本作の音楽を担当するのは岡部啓一氏、瀬尾祥太郎氏、帆足圭吾氏。いずれも音楽制作会社MONACAに所属する作曲家である。このうち岡部氏と帆足氏はニーアゲシュタルトレプリカントやDOD3の作曲を、瀬尾氏はニーアオートマタで編曲を手がけた経験があり、ヨコオタロウ作品おなじみの作曲家である。本作ではゴシックを想起させるシンフォニックサウンドが数多く取り揃えられていて、独創的で退廃的な雰囲気づくりに大きく貢献している。サウンドトラックは現時点でvol.2まで発売されている。

タイトル画面で流れるのがこの曲である。簡素なピアノと素朴な弦楽器が織り成すクラシカルなアンサンブルが印象的である。深く沈み込むように奏でられるピアノの伴奏と、優雅に妖艶に駆け抜けるストリングスの主旋律が、悲劇的な色味を纏いながら静かに響き合う。徹頭徹尾、暗澹とした曲調を貫くことで、その絶望的な響きに思わず酔いしれたくなるほどの心地良さを生み出す。曲前半は低音を駆使して重苦しさを、42秒からの後半部分はオクターブが上がって高音主体で悲痛さを目一杯漂わせる。最悪の物語の幕開けにふさわしい、没入感たっぷりの一曲である。

シンプルだけど味わい深い曲ですね。