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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1145 『グルンドラ・シャハ戦』(Mike Reagan・桑原理一郎/Devil's Third/WiiU)

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ヴァルハラゲームスタジオがおくるシューティングアクション・デビルズサードより、

Mike Reagan・桑原理一郎作曲、『グルンドラ・シャハ戦』(仮称)。

グルンドラ・シャハとのボス戦で流れます。

ニンジャガイデンの生みの親として知られる板垣伴信氏率いるヴァルハラゲームスタジオのデビュー作にあたる本作。スクール・オブ・デモクラシー(通称SOD)と呼ばれるテロリスト集団の攻撃によって混乱に陥った世界を舞台に、元SOD所属だが組織の方針に疑問を感じて自ら投降した男・アイヴァンが、米国政府の依頼を受けてかつての同胞に立ち向かうことになる。サードパーソンシューティングに刀や拳などによるスピーディーな近接戦闘を取り入れたアクションゲームで、暴力描写やゴア表現を多く含む過激な作風が特徴である。ソロプレイとマルチプレイ(現在はサービス終了済み)の二つのモードがあり、前者は全9ミッション構成で物語を進めていくオーソドックスな内容だが、後者はさらに演習と実戦に細分化されている。演習ではよくあるバトルロイヤルから玉入れを彷彿させる変わり種の競技まで多彩な遊びが用意されていた一方で、実戦では13地域に分かれた北米全土で要塞攻略戦に挑んで大陸制覇を目指す大がかりな攻防を繰り広げることができた。バグや処理落ち、操作性の難などが見受けられるが、独特な噛み応えのある意欲作に仕上がっている。

本作の音楽を担当するのはMike Reagan氏と桑原理一郎氏。Reagan氏は主に映画やテレビの劇伴作曲で活躍するアメリカ出身の作曲家で、ゲーム音楽方面ではGod of Warシリーズを手がけていることで知られる。桑原氏はフリーランスの作曲家で、板垣氏と同じくかつてテクモに在籍していた経験がある。本作では昂揚感のあるオーケストラサウンドを中心としつつも、主人公が東洋系の武術の使い手であったり、忍者が登場する世界観であったりすることから、琵琶や尺八などの和楽器を用いた楽曲も存在する。サウンドトラックは未発売のため、曲名は便宜上の仮称とする。

グルンドラ・シャハ戦で流れるのがこの曲である。ソロプレイのミッション3で戦うことになるボスで、強面の黒人にして主人公に格闘技を教えた師匠である。近距離での凶暴さはもちろん、ククリ投げを駆使して容赦なく襲い掛かってくる。その獰猛な戦いぶりを表現するにあたって、イントロから勢いよく奏でられるストリングスの速弾きが印象的で、後ろで響く四つ打ちのビートと怪しげな電子音が絶妙に焦燥を煽る。休符や短音をうまく活用しながら歯切れ良い旋律を紡ぐことで、強敵と対峙している緊張と興奮が強く伝わってくる。26秒頃で伴奏に溶け込むようにシタールや歌声が響き渡るほか、46秒頃では笛の音がさりげなく加わるなど、主旋律以外のパートも相応の存在感を放っている。テクノ風の曲調に民族音楽を思わせる独特な節回しが融合した魅惑的な一曲である。

胃がきりきりするようなスリルがあって、それがなんとも心地良いです。