Moon Studiosがおくるプラットフォームアクション・Oriより、
Gareth Coker作曲、Will of the Wispsの『Dashing and Bashing』。
ダッシュを習得した際などに流れます。
オーストリアのゲームスタジオ・Moon Studiosの代表作にあたるOri and the Blind Forest(オリとくらやみの森)の続編にあたる本作。前作で森の危機を救った精霊・Oriは、嵐に見舞われてフクロウの友だち・Kuと離れ離れになってしまい、再び危険に満ちた冒険に出ることになる。前作でも特徴的だった幻想的なグラフィックとメトロイドヴァニア形式のゲーム性は健在で、新要素として歯応えのあるボス戦が追加された。前作のスキルツリーに代わるものとしてSpirit Shards(精霊のかけら)が登場し、自由に装備して自分好みの効果を付与できるようになったほか、ダッシュやグラップルといった特殊なアクションは各地に点在するAncestral Tree(長老樹)から習得できる仕組みとなっている。前作の魅力を踏襲し、息をのむようなビジュアルとサウンドの表現力と、爽快かつ適度にスリリングなアクション性が融合した正統続編に仕上がっている。後にスイッチとXbox X|Sに移植された。
本作の音楽を担当するのはGareth Coker氏。前作でもおなじみのイギリス出身の作曲家で、普段は映画やテレビの劇伴を手がけている。前作で複数の音楽賞を受賞した高水準の音楽性は本作でも受け継いでいて、実際に本作のスコアも同様にいくつかのアワードでノミネート・受賞している。前作同様、深遠なアートワークを彩るピアノやハープ、ストリングスなどを軸にした壮麗なフルオーケストラの楽曲が揃っていて、本作ではボス戦用の重めの戦闘曲や前作のアレンジなどが加わった。また、BGMは概ね途切れることなくシームレスに繋がる仕組みとなっている。サウンドトラックはSteamのDLCや氏のBandcampなどで各種デジタル配信されている。
本作では前述の通り、長老樹から新たな能力を習得することで探索やアクションの幅が広がっていくが、そのうちダッシュを覚えた際に流れるのがこの曲である。弦と木琴のざわめくようなイントロから始まり、20秒あたりでピアノと伴奏の重低音が加わることで、美しくも勇ましい、神秘的な昂ぶりを生み出す。フレーズが一旦落ち着く40秒過ぎには、カエルの鳴き声にも似た、ギロ(体鳴楽器)のような独特な擦る音がしばし響き、それが止む頃にはバスクラリネットの奥深い音色と、次いでピアノの旋律とが絡み合う。曲後半は弦の出番が増え、笛とハープを伴いながら、やがて2分46秒でピアノも一丸となって、どこかメランコリックなメリハリを見せる。新しいアクションを身に着けた昂揚感と、この先に待ち受ける困難に対する予断を許さぬ緊張感とが綯い交ぜになった一曲である。
音に命が通っている感じがするのがオリの良さですよね。