VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#946 『ボーナスステージ面』(玉山文人/熱闘サムライスピリッツ/GB)

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タムソフトがおくる対戦型格闘ゲーム・熱闘サムライスピリッツより、

玉山文人作曲、『ボーナスステージ面』(仮称)。ボーナスステージなどで流れます。

SNKのアーケード用格ゲー・サムライスピリッツゲームボーイ移植にあたる本作。おなじみ覇王丸ナコルルなどがデフォルメされた形で熱闘を繰り広げることになる。原作の全キャラ+隠しで3キャラ、それも人選がラスボスのみならず、黒子に飛脚というサブキャラをもプレイアブルで搭載している点が特徴で、シリアスなものからコミカルなものまで各キャラに独自のストーリーが用意されている。怒りゲージや幕間のデモシーンといった原作の諸々の要素を再現している一方で、原作と比べてコマンドが簡素化され、当たり判定がかなり大味になるなど、操作や対戦面でのつくりは粗削りな部分もある。オリジナル要素を絡めたアレンジ移植として意欲的な仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは玉山文人氏。当時タムソフトに所属していた作曲家で、サムスピシリーズに携わるのは現時点で本作のみである。本作では主に原作(作曲は山手安生氏と幡谷正彦氏による)の楽曲をGB音源向けにアレンジしているが、一部書き下ろしの追加曲も含まれる。アーケードとGBで性能差が顕著であるなかでも、編曲・新曲ともによくつくり込まれていて、戦闘の緊張感を感じることができる。サウンドトラックは未発売のため、曲名は便宜上の仮称とする。

本作用の新曲のうち、原作でも馴染み深い演舞(ボーナスステージ)や、黒子・飛脚と対戦するステージで流れるのがこの曲である。イントロから派手に飛ばすアップテンポな曲調が印象的で、リズミカルに刻まれるビートの上を、躍動感に満ちた主旋律が勢いたっぷりに疾駆する。はじめは低めの音程で推移するメインメロディーだが、30秒あたりを目安にどんどん高音へと変遷すると、ずしりと響くベースやドラムと相まって、重厚でありつつも鮮やかな爽快感を生み出す。1ループ45秒足らずの曲尺に、ボーナス面らしい弾けるような明るさと、黒子や飛脚のテーマ曲としてのキャッチーさとを凝縮した一曲である。

この曲を紹介してほしいというリクエストをいただきました。ループ間際まで、そしてループ後も勢いが一切衰えないところが素敵ですね。