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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1150 『STATUE OF LIBERTY』(塚原啓介/シャドー・ダンサー ザ・シークレット・オブ・シノビ/MD)

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セガがおくるアクション・シャドーダンサーより、

塚原啓介作曲、MD版の『STATUE OF LIBERTY』。3-2面および5-1面で流れます。

忍者を主役とする忍シリーズのうち、同名のアーケード作品のメガドライブ向け移植にあたる本作。ニューヨークを舞台に、忍者の主人公・ハヤテは、育ての親を謎の集団に殺されたことをきっかけに、相棒の忍犬・ヤマトとともに旅立つことになる。忍犬を連れて戦うというアーケード版の象徴的なシステムを受け継ぎつつ、ステージ構成から操作性、アクションの挙動に至るまで、移植に際して大幅に改変されているため、実質的には別物に近いつくりに仕上がっている。メガドライブの性能を活かしたパワフルなグラフィックや演出が特徴で、被弾すれば一発で死ぬシビアな仕様だが、うまく忍犬に指示を出して敵の動きを封じられれば切り抜けられる絶妙なバランスに調整されている。アーケード譲りのボーナスシステム(特定の条件を満たすとスコアが加算される)もあり、独特な歯応えと味わい深さのある仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのはTSUKACHANこと塚原啓介氏。セガ所属の作曲家である。アーケード版に引き続き作曲を担当していて、移植にあたって曲は差し替えられている。やや抑えめなノリだった原作から変わり、本作では全体的にアグレッシブな曲調で耳に残りやすい楽曲が揃っている。小刻みに音色を奏でるミニマル系のものから、断片的にボイスを取り入れたヒップホップ調のものまで、斬新極まるサウンドを楽しむことができる。サウンドトラックについては、忍シリーズの歴代BGMをまとめたアルバムが存在し、そのなかに本作の楽曲も含まれている。

全5ラウンドのうち、ROUND 3-2と5-1で流れるのがこの曲である。3-2面は自由の女神像を背景に戦う夜戦ステージで、5-1面はこれまで倒してきた敵と戦う再戦ステージである。美しくも不気味に聳え立つ女神像がもたらす印象的なビジュアルと、今までの集大成と言わんばかりの再戦のシチュエーションの両方を、イントロから勢いよくかっ飛ばすクールな音色で力強く彩る。冒頭の第一音から迫力十分だが、5~6秒で痺れるようなド派手なフレーズを入れることで、瞬時に脳裏に焼き付く決定的なインパクトを与える。以降もぎらついた質感のある音色を奏で、自由自在に音階を行き来する奔放な旋律と、どっしりと拍を刻む重厚なパーカッションによってバランスよく昂揚感を刺激する。48秒あたりで曲調に変化が生じると、短く響く音や休符をうまく使いこなして独特な格好良さを感じさせる。ループ直前には再度ド派手なフレーズを挿入するも、あえてぶつ切りな鳴らし方にするなど、最後まで聴き飽きない工夫が凝らされている。強烈なノリに満ちた一曲である。

この曲を紹介してほしいというリクエストをいただきました。曲名にもなっているように女神像ステージの印象が強いですが、ラスボス前の5-1面で再利用されるのは良い演出ですね。