VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1272 『Emergency Avoidance』(増子司/ブレイゾン/AC)

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アトラスがおくるシューティング・ブレイゾンより、

増子司作曲、『Emergency Avoidance』。4面の後半で流れます。

アトラスの初期のアーケード作品として登場した本作。バイオサイバー軍団を動員して圧政を強いる地球帝国に立ち向かうべく、敵の機能を停止してボディを奪う特殊弾・トランキランダーを搭載した最新鋭戦闘機・ガーランドを駆って戦うことになる。全5面構成の横スクロールシューティングで、操作には8方向レバーと2ボタン(通常弾と特殊弾)を用いる。トランキランダーを放って停止させた敵に接触すると、機体を乗っ取って自機に転用できる点が特徴である。乗っ取り可能な敵は7種類、それぞれ異なる機体性能や攻撃方法を持ち、耐久が尽きると素の状態(ガーランド)に戻る。自機の強化は乗っ取りの概念に集約されている都合上、別途パワーアップアイテム等は存在せず、乗っ取り先の強さに依存する。全体的に敵が硬く、スクロール速度が一部を除いてゆったりしているなど、調整が大味な部分もあるが、OPデモのアニメーションの出来や、乗っ取りのコンセプトを活かした興味深いゲーム性などと相まって意欲的な仕上がりとなっている。後にスーファミに移植された。

本作の音楽を担当するのは増子司氏。スタッフロールではMaccoという名義でクレジットされている。かつてアトラスに在籍していた経験のあるフリーランスの作曲家である。アトラス製のアーケード作品に限ればあまり他に担当例はないが、アトラスより遡ってテーカンテクモ)在籍時代ではよくアーケード作品のサウンドまわりを手がけていた。本作ではFM音源のぎらついた質感を格好良くチューンしたメロディアスなサウンドが揃っている。サウンドトラックは稼働開始から20年近く経ってから登場し、アーケード音源とスーファミ音源がそれぞれ収録されている。

4面の後半(中ボス戦後)で流れるのがこの曲である。メカメカしい見た目をした基地内部を進むステージで、中ボス戦後はしばらく高速スクロールが続く。手始めにビートのみを鳴らしてウォーミングアップし、2秒からさながら警報音のように徐々に高い音程へと滑奏する電子音を鳴らすことで、ますますヒートアップしていく。13秒で勢いに火がつくと、激しく響き渡る主旋律に、等間隔かつ高密度で刻むベースと、威圧的な電子オルガンの伴奏が重なり合い、燃え盛るようなノリを感じさせる。30秒頃からオルガンが伴奏から主役に代わると、音色そのものは重い悲壮感が漂っているが、音色の使い方はむしろ躍動的で曲全体を牽引するような疾走感を帯びている。47秒頃でまるで銃声のごとく派手な破裂音を伴って締め括ると、以降はループに突入するが、ループ範囲は勢いに火がついた後を対象としているため、ずっと盛り上がり続けることになる。止まらない勢いに満ちた一曲である。

痺れますね。例えるなら、初代メガテンの通常戦闘曲とBIG BLUEが合体したような……? スーファミ音源は音質の違いに加えて音程が上がってます。あわせてどうぞ。

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