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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1631 『立ちはだかる壁』(山本由貴子/百獣大戦アニマルカイザー/AC)

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バンダイナムコがおくるカードバトルゲーム・アニマルカイザーより、

山本由貴子作曲、『立ちはだかる壁』。一部のボスアニマル戦で流れます。

専用のカードを筐体に読み込ませて遊べるデータカードダスシリーズのうち、版権ものではないオリジナル作品として登場した本作。古今東西、陸海空の広義の動物たちが最強の座を賭けて戦うことになる。哺乳類、水生、鳥、昆虫、絶滅種、機械を纏った生物兵器まで、平等の土俵でドリームマッチを繰り広げられる点が特徴である。赤のアニマルカードで召喚する動物を、緑のストロングカードでわざの強化や各種バフを、青のミラクルカードで強力な必殺技や特殊能力を組み合わせ、編成したデッキで最大3ラウンドの勝ち抜き戦をおこなう。カードを持っていれば筐体に読み込めるし、持っていなくてもプレイ後に勝敗にかかわらず発行される。戦闘はタイマンで先に相手の体力を削ったほうが勝ちとなり、ターン制で回転するスロットをタイミングよく止めることでわざを発動させていく。わざのモーションや動物の動きは凝っていて、わざで火山を噴火させるのは序の口、月や隕石やメロンを空から降らせたり、地球を破壊したりして動物たちの異次元な戦いぶりを堪能できる。総じていろんな意味でワイルドでロマンあふれる仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは山本由貴子氏。当時バンダイナムコに所属していた作曲家である。アニマルカイザーシリーズには続編のグレートでも引き続き携わっているほか、同時期に同じくバンナム製のアーケードゲーム太鼓の達人シリーズなどでも頻繁に楽曲提供していた。本作ではラッパやオーケストラヒットなどを駆使したダイナミックな曲調を中心に取り揃えられていて、ハープやカリンバなど原始的で幻想的な響きを添えたもの、エスニックな雰囲気のものなどもある。サウンドトラックはDVDとカード付きの限定生産で主題歌や短いジングルなども含めて収録されている。

一部のボスアニマル戦の最終ラウンドで流れるのがこの曲である。冒頭から妥協せずスリル満点のストリングス演奏を披露して強い緊張感を生み、ブラスとドラムが行進曲のようにどっしり安定したリズム感で唸ることで士気を高める。6秒から入るメロディーは大仰で威圧的だが、やがて30秒あたりからヒロイックな勢いを帯びていき、脅威に屈せず立ち向かう勇気を感じさせる。41秒からはオーケストラヒットをこれでもかというくらい派手に鳴らし続け、一連の間奏を経て馴染みのあるフレーズに戻る。しかし前回と異なり1分10秒から開放的な新パートへと繋がり、ラッパが限界までパワフルな盛り上がりをみせたあと、急であると同時に違和感なく繊細なハープの音階が奏でられるようになる。ハープの奏でる調べは冒頭のストリングスとよく似ていて、1分21秒から22秒で瞬時にハープからストリングスへと音色が切り替わるさまは見事に嵌まっている。大スケールな激戦を彩るにふさわしい獰猛かつ勇猛な一曲である。

この曲を紹介してほしいというリクエストをいただきました。グレートでも使われているそうですね。とても格好良いと思います。