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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1548 『無慈悲な王』(椎名豪/GOD EATER BURST/PSP)

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バンダイナムコがおくるドラマティック討伐アクション・ゴッドイーターより、

椎名豪作曲、バーストの『無慈悲な王』。ハンニバル戦で流れます。

人類と異形の熾烈な闘争を描くゴッドイーターシリーズのうち、1作目の拡張版にあたる本作。突如現れた未知の捕喰者・アラガミによって人類が滅亡の危機に瀕するなか、唯一の対抗手段として開発された生体兵器・神機を操るゴッドイーターたちが絶望に抗うことになる。無印の内容を丸ごと収録し、各種仕様の追加や改良をおこない、ゲームバランスを全面的に調整したうえで後日譚となる新規ストーリーを追加した、名実ともに完全版と言える充実ぶりを特徴とする。ミッションを受注して最大4人で討伐対象を狩る基本的なサイクルはそのままに、本作では新武器の登場や既存のモーションの見直し、バーストモード(強化状態)の性能向上と専用スキルの導入、連撃の最後に取れるコンボ捕喰の追加など、多くの実用的な調整が施された。同行するNPCの思考ルーチンが強化され、相対するアラガミの脅威は理不尽さを減らす方向で緩和された。そのほか、衣装の増加、通信でキャラデータを送受信できるアバターカードの新設といった細々とした楽しみも完備されている。総じて遊びやすさが大きく改善された仕上がりとなっている。後にRESURRECTIONという題でPS4とVita向けにリメイクされた。

本作の音楽を担当するのは椎名豪氏。当時バンダイナムコに所属していた作曲家である。ゴッドイーターシリーズの象徴的なサウンドの生みの親としてシリーズに連綿と携わっている。主題歌には無印と同様、菊池一仁氏作曲のもと、ボーカルにはチベット出身の女性シンガー・alan氏を起用している。本作では追加曲は5曲と限られているなかで、いずれも順当に作風を受け継いで、迫力と狂気と絶妙な美しさを湛えたノイズ交じりのオーケストラ系の楽曲が揃っている。サウンドトラックにはボイスドラマや主題歌も含めて収録されている。

ハンニバル戦で流れるのがこの曲である。本作のパッケージ画像を飾る新種のアラガミで、白い竜のような体躯で人間を思わせるしなやかな動きをみせる。出だしから恐るべき緊張感に満ちたピアノとストリングスが響き合い、7秒から神々しいクワイアが加わると、ますます緊張が膨れ上がって息が詰まりそうな圧迫感を醸し出す。荒ぶるクワイアに負けじとオーケストラが激しく主張するが、23秒で急にクワイアが途絶えると一気に電子音楽らしい曲調に転じる。29秒からじりじりと溜めるようにエレキバイオリンが響いた後、再びクワイアが加わる際には電子音楽風のリズムを下敷きにシンフォニックな合奏を披露する。1ループ55秒とそう長くないが、放つインパクトは凄まじく、曲名通りの絶対的な強者の風格をひしひしと感じさせる。聴いていると全身が恐怖に震え、昂揚感に奮える一曲である。

ハンニバルカルタゴの将軍の名前として有名で、その名前の語源には「慈悲深き主」「主よ慈悲を垂れたまえ」などがあります。こういうの調べると面白いですね。