ウーピーキャンプがおくるアクション・オレっ!トンバより、
藤田晴美作曲、『ボス戦』(仮称)。ボス戦で流れます。
ウーピーキャンプのデビュー作兼代表作である本作。緑豊かで平和な大陸が魔ブタに支配され、強力な魔法とイタズラで人々を困らせるなか、大自然のなかで育った少年・トンバは、魔ブタの手下に奪われたジィちゃんの形見を取り戻すべく冒険することになる。児童向けアニメのような世界観で彩られる2D横スクロールアクションで、2Dと言っても道中に手前と奥で行き来できる箇所が設けられている点が特徴である。いわゆるステージクリア形式のように面ごとに区切られるのではなく、地続きでマップが構成され、ときには集落に立ち寄って村人に聞き込みをしたりおつかいを頼まれたりしながら進めていく。集落のなかでは見下ろし視点に切り替わるほか、装備やレベルなどの概念もあり、基本的なゲーム性は2Dアクションだが随所でRPG的な要素が散見される。アクションに関してはダッシュやジャンプといった基本動作はもちろん、大自然育ちの主人公ならではのかみつく攻撃が重要で、かみついて敵をぶん投げたり、かみついた相手から能力を得たりすることができる。また、鉄球やブーメランといった武器、火や水の属性ごとの宝石など、攻撃や移動に役立つ道具が多く用意されていて、様々な動きを駆使してステージ攻略する軽快さを味わえる。総じて小気味良い仕上がりとなっている。後に海外向けにPS5、スイッチ、Steamにリマスターされた。
本作の音楽を担当するのは初谷奈央氏と藤田晴美氏。藤田氏はフリーランスの作曲家で、初谷氏は当時ウーピーキャンプの一員として作曲が本業ではなく事務方を担っていたようである。本作では藤田氏がほぼすべて作曲していて、初谷氏は数曲の試作の他にパッケージ・マニュアル制作など音楽以外のところを兼任している。剽軽でプリミティブな作風を反映した陽気なBGMが多く、複数の楽曲で共通するメインフレーズを取り入れている。カラッと響く打楽器や素朴な笛、木琴、スチールパンなどの楽しげで茶目っ気あふれる音色を楽しむことができる。サウンドトラックは未発売のため、曲名は便宜上の仮称とする。
魔ブタとのボス戦で流れるのがこの曲である。緑の魔ブタ、紺の魔ブタといったように色ごとにボスがいて、悪者だけどどこか間が抜けていて憎めない雰囲気がある。戦闘前のコミカルな会話シーンも含めてこの曲が流れ続け、出だしから異様にノリノリなシロフォンの音色がなんとも癖になる。7秒頃でヘンテコな効果音を鳴らした後、大袈裟に騒がしいラッパのメロディーが加わるようになり、15秒以降はバンジョーを彷彿させる音色を交えて軽やかでありながら妙に哀愁漂う響きを生む。キィキィ喚くような高音域パートを終えると、23秒からは一転して低音域でグルグル唸るような演奏を披露し、1ループが短い曲のなかで強烈にスウィンギンでファンキンなムードを醸している。全体的な聴き心地はシュールだが、冒頭を除いてほぼずっと伴奏に張り詰めた高音のストリングスを添えることで適度なスリルを感じさせ、ボス戦らしい手強さが音を通じて伝わってくる。ふてぶてしい一曲である。
馬鹿馬鹿しいけど馬鹿にできないふてぶてしさがあって、とてもブタブタしい……ブタブタしい? とにかく素晴らしい曲ですね。