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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1412 『空中要塞シャイタン』(阿保剛/サモンナイトグランテーゼ 滅びの剣と約束の騎士/PS2)

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フライトプランがおくるRPGサモンナイトより、

阿保剛作曲、グランテーゼの『空中要塞シャイタン』。空中要塞シャイタンで流れます。

召喚術を主軸に据えたシミュレーションRPGサモンナイトシリーズの外伝作として、PS2の最晩期に登場した本作。大地が分断された異世界・ジュエルノーツを舞台に、願いを叶える者の魂を呼ぶ儀式で子どもたちに召喚された記憶喪失の騎士・ロストと神官の娘・ミレットは、子どもたちの願いを叶えるため、そして己の身に何が起きたかを知るために冒険することになる。エクステーゼの系譜を継ぐアクションRPGで、舞台は一新されて3Dになったが、男女のダブル主人公制である点、操作キャラを交代できる点など共通点が多い。剣使いのロストと銃使いのミレットでアクションや性能が異なり、戦闘中にキャラを瞬時に切り替えてコンボを繋げることができる。シリーズおなじみの召喚術による強力な攻撃や、戦闘以外だとアイテム錬成、主に周回時にマルチエンディングに発展する交流要素の夜会話、おまけの隠しダンジョンなども存在する。また、各章の初めにはナイトメアという腕試しの戦闘があり、勝っても負けても物語は進むが、結果次第でその章のボスが強化されるという難易度調整措置が施される。3Dだが自由な視点移動ができずカメラワークにもどかしさがある一方で、程よくRPGの諸要素が揃っていて、さくっと遊べる仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは阿保剛氏と岡本隆司氏。阿保氏は5pb.(現MAGES.)に所属する作曲家で、岡本氏は当時フライトプランに所属していた作曲家である。両名ともサモンナイトシリーズの作曲は本作が初めてで、外部起用となる阿保氏がメインコンポーザーを務めている。主題歌はシリーズおなじみのシンガーソングライター・藤田千章氏が作詞作曲プロデュースし、Emiko Bleu氏をボーカルに据えている。本作のファンタジックな世界観を彩るにあたって、煌びやかなシンセを中心とした上品なサウンドが揃っている。フィールド曲は心地良いノリを帯びていて、戦闘曲のなかにはプログレッシブ風の激しく荘厳なものもある。サウンドトラックはボーナストラック付きで2枚組で収録されている。

空中要塞シャイタンで流れるのがこの曲である。シャイタンは大地を引き裂いた兵器・災いの剣そのものであり、空中に浮かぶラストダンジョンである。そうしたなか、この曲は出だしから間違いようもなくラストダンジョンらしい極上のテンションが漂っている。シンセベルの華やかで輝かしい音色に、11~13秒で鳴る鮮やかなブラス、13秒以降から主旋律を担う電子ピアノなどが絡み合い、全体的にノリは良いが適度に落ち着いているような、決戦に向けて十分に覚悟が定まっているような印象を与える。13~25秒はピアノ、26~37秒はシンセベル、39秒~1分8秒はブラスとフレーズごとに主旋律をバトンタッチし、主役以外は適宜伴奏に回ってベースとともに曲の流れを盤石に支える。一旦1分10秒でイントロに回帰するようなそぶりを見せるが、1分35~36秒でポーズを挟んだり、続くフレーズは主たるメロディーは共通しているものの奏でられる楽器が変わっていたりして変化が見受けられる。その変化が最も顕著に現れるのが2分3秒の締めの間奏部分で、シリアスな曲調のなかで澄んだピアノの音色が一際よく映える。非常に凛とした気概を感じさせる一曲である。

良いですね、ラスダン感満載ですね。