klutzGamesがおくるシューティング・Teslapunkより、
Thorsten Fleisch作曲、『Spring-Cleaning the Chamber of Horrors』。
チュートリアルステージで流れます。
ドイツのインディーゲームスタジオ・klutzGamesのコンシューマー進出作にあたる本作。昼は侵略者、夜はDJとして名を馳せる火星の皇帝・Emperor Zangóraxの地球侵攻を阻止すべく、Nikola Teslaが設計した奇抜な兵器で出撃することになる。ビンテージ感のあるサイケデリックな世界観が特徴で、あからさまに怪しい雰囲気が漂っているが中身は古典的で骨太な縦スクロール弾幕シューティングである。主に全6面を戦い抜くアーケードモードと、延々と押し寄せる敵を倒して飛行距離を競うサバイバルモードが収録されている。難易度はNOVICEからDYNAMICまでの4段階で、トレーニングやチュートリアルなども完備されている。攻撃方法は連射可能な通常弾と、発射中は自機が減速するレーザーがあり、さらに青いキューブを集めてゲージを溜めれば敵弾を掻き消しつつスコア倍率を上昇させる強力なVoltage Burstを放つことができる。ゲームシステムはシンプルな部類で、展開される弾幕には幾何学的な美しさがあるなかでも、やたらBGMがダンサブルだったり、画面の端にMARS TVという謎の番組が放映されていて小ネタや雑談を楽しめたりするなどのヘンテコ要素にも事欠かない。総じてオーソドックスかつユニークという絶妙な仕上がりとなっている。後にWiiUやSteamに移植された。
本作の音楽を担当するのはThorsten Fleisch氏。ドイツ出身の実験映画作家兼サウンドクリエイターで、klutzGamesの代表であるTimo Fleisch氏とは兄弟の間柄である。本作のBGMは作中の設定上ではすべてEmperor Zangóraxが制作したことになっていて、火星人DJがおくるノリノリなスピードメタルやインダストリアル系の楽曲を堪能することができる。なかにはボーカル入りや歪んだ合成音声を用いたものなどもある。BGMはステージ構成や敵の攻撃パターンとシンクロしていて、おそらくBGMを聴かせる目的なのか、ステージ中は弾の発射音や被弾音などの効果音が存在しない(ステージ外の決定音やリザルト関連の効果音は普通に存在する)。サウンドトラックは各種デジタルストアで配信されている。
チュートリアルステージで流れるのがこの曲である。チュートリアルでは肖像画姿のNikola Teslaが基本的な攻撃手段や当たり判定などの仕様について説明し、ときどきEmperor Zangóraxが茶々を入れてくる。そうしたなか、終始そこそこ速いペースで似たり寄ったりのリズムパターンを刻み続けるミニマルテクノ風のナンバーでじわじわと盛り上げる。6秒頃からプラック系の弾力のある音色を取り入れたり、12秒頃から妙に中毒性のあるフレーズを繰り返したりして、耳に心地良いけれど斬新さの片鱗が感じられるような印象を与える。38秒でしばらくクラクションのような効果音を鳴らした後、44秒から新たに音色が加わってますます弾んだ調子を帯びるようになる。これでだいたい音色が出揃って後は反復するのみかと思いきや、1分55秒という遅い段階で一瞬の休止を挟んだ後に新手のフレーズが参戦する。まるで上ずった調子で歌っているかのような響きがあり、すでに中毒性があったがいっそう癖になる聴き心地を生み出す。聴いているうちに愉快になってくる一曲である。
曲名を訳すと、「恐怖の部屋を大掃除」……? それは愉快そうですね。