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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1414 『サイラス村』(松前公高/玉繭物語/PS)

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元気がおくるRPG・玉繭物語より、

松前公高作曲、『サイラス村』。サイラス村で流れます。

スタジオジブリ近藤勝也氏がデザインを担当したことで知られる玉繭物語シリーズの1作目にあたる本作。かつて精霊と人の悲劇の破局を経て一国が滅びの虫・オニブブに呑まれたと伝わるパレルの森を舞台に、魔物を浄化する繭使いの家系に生まれた少年・レバントは、許嫁の少女・マーブとともに、突如押し寄せたオニブブの大群を前に数奇な運命を辿ることになる。民話のような幻想的な世界観と、魔物を繭で捕らえて聖魔として使役するモンスター育成型のシステムが特徴のRPGである。物語は独特な昏さと味わいがあり、ボリュームは薄いがボイス付きで丁寧に綴られる。モンスター育成要素に関しては、全体的に不気味なクリーチャー然としたデザインであるうえに、魔物同士を合成することで単に能力を引き継ぐだけでなく外見も双方の特徴を備え、いわばキメラ的な妖しさを湛えるようになる。操作は方向キーで上が前進に固定されているラジコン操作形式で、やや慣れを要する。すこし癖があるが雰囲気が魅力的な仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは松前公高氏。キーボーディスト兼作編曲家で、ライブ演奏やテレビの劇伴作曲など幅広く手がけている。ゲーム音楽方面では90年代を中心にいくつか担当していて、玉繭物語シリーズには次作でも関わることになるほか、本作以前には同じく元気製のキリーク・ザ・ブラッドシリーズでの作曲経験がある。本作では和風とも無国籍風とも言える独自の空気感を表現するにあたって、尾を引くような穏やかで物憂げな楽曲を取り揃えている。民族色の強い打楽器や和楽器、神秘的なシンセやオーケストラなど、様々な音色を散りばめているなかでも、とりわけ作中で繭使いの必需品として登場する笛の音が頻出する点が印象深い。サウンドトラックはゲーム発売後まもなく登場した。

サイラス村で流れるのがこの曲である。森のなかにある小さな村落で、主人公の故郷として作中多くのイベントが発生するため、複数のアレンジが存在する。コーラス風の幻想的な伴奏に、素朴で表現力豊かな笛の音が重なり合うことで、瞬時に胸に染みるノスタルジックな感傷に浸らせてくれる。じっくり堅実に刻む打楽器と、低音で静かに確実に奏でられるベースが、心落ち着かせるような優しいリズム感を生み出す。23秒からすこし明るめな響きを帯び始め、それまで数小節にわたって長々と一定の音色を奏で続けてきたコーラスは、曲の進行にあわせて小節ごとに音色を変えるようになる。やがて38秒の笛の高音を頂点にして穏やかに収束していき、やおら次のループへと繋がる。包み込むような柔らかな哀感と安寧に満ちた一曲である。

ピチカートと環境音が素敵な『サイラス村~慰霊祭の夜』、シリアスな余韻あふれる『サイラス村~蛹』、複数のアレンジのいいとこどりのような『サイラス村~聖霊』もあわせてどうぞ。

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