仲野順也作曲、『旅立ちの森』。カローナの森で流れます。
スクウェアの完全新作として登場した本作。どんな願いでも叶えてくれるという究極のマジックアイテム・遺産を巡り、生い立ちも目的も異なる二人の主人公・ルウとミントがそれぞれの野望のために冒険を繰り広げることになる。物語の舞台や大筋は共通しているが、ルウの物語は亡くなった想い人を救う手立てを探すシリアス寄りの成長譚で、ミントの物語は素行の悪さゆえに追放された祖国を見返すべく世界征服を企むコメディ寄りのドタバタ劇となっている。当時としてはまだ斬新だったフル3Dの空間表現を取り入れていて、シナリオ・アクション性・グラフィックともに高水準にまとまっている。
本作の音楽を担当するのは仲野順也氏。音色作成（シンセオペレート）として岩崎英則氏も大きく携わっている。仲野氏は当時スクウェアに所属していて、岩崎氏は現在も所属している作曲家である。スクウェアに入ってから仲野氏が単独で作曲するのは、トレジャーコンフリクスとアナザー・マインドに続き本作が三作目で、前二作はいずれも一癖ある作品だが、本作では打って変わって王道なファンタジーRPGの作曲を任されている。そのためか、氏にとってかなり気合を込めてつくった、特別な思い入れがある作品であるらしく、いずれの楽曲も本作の世界観に見合った幻想的で煌びやかな名曲揃いとなっている。サウンドトラックは本編未使用のテレビCM用BGMも含めて収録されている。
カローナの森で流れるのがこの曲である。物語開始直後に訪れる最初のダンジョンである。静かな電子音のアルペジオから始まるイントロが印象的で、曲が進むにつれてドラムパートが追加され、伴奏が追加され、さらにそこに、民族楽器のツィターを思わせる牧歌的な音色と、勇ましく木霊する笛の音が追加されると、それらすべてが組み合わさって没入感たっぷりに森の情景を描き出す。瑞々しく響き渡るメロディーラインは、未知への期待と不安を感じさせ、旅立ちというシチュエーションにふさわしい素朴な好奇心を掻き立てる。不思議とうわずるような、独特な温かみと昂揚感に満ちた一曲である。
ツィターなのでしょうか。それともサントゥールのような打弦楽器でしょうか。民族楽器って難しいです。
