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#1253 『武蔵伝説』(関戸剛/BRAVE FENCER 武蔵伝/PS)

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スクウェアがおくるアクションRPG武蔵伝より、

関戸剛作曲、『武蔵伝説』。いざないの森で流れます。

武蔵伝シリーズの第1弾としてPS後期に登場した本作。英雄召喚の術が伝わるヤクイニック王国を舞台に、王国の危機に際して伝説の二刀使い・ムサシが召喚されるも、なぜかその姿は子供であり、期待と不安と波乱に満ちた少年ムサシの旅が始まることになる。全6章構成の3DアクションRPGで、主人公をはじめとする彩り豊かなキャラが織り成す、ときにコミカルでときに熱い、起伏に富んだ物語が特徴である。アクション面では、物語に沿って五輪の書を入手することで各巻に紐づく技(地なら地を揺るがす、水なら水を纏って弾を撃てる等)を謎解きと戦闘の両方で使えるようになるほか、ゲット・インという独自のシステムが存在する。片方の刀には、敵に投げて当てると相手の能力を吸収して我が物とする性能が備わっていて、このゲット・インを応用することがギミック攻略の鍵となる。そのほか、時間や曜日の概念が導入されていたり、各種ミニゲームや収集要素も充実していたりするなど、細かな遊びが散りばめられている。手堅く小気味良くまとまった仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは関戸剛氏。スクウェア(現在は合併を経てスクウェア・エニックス)に所属する作曲家である。本作は氏がスクウェアに移籍して初めての担当作品である。本作の音楽は、独特な温かみとメリハリのある世界観に見合った楽曲が揃っている。勇ましく冒険心をそそるようなものから、素朴でおどけた雰囲気のものまで、ものによってはメインテーマのフレーズなどをモチーフとして他の楽曲に取り入れるなどして、丁寧さが光る作品の雰囲気づくりを図っている。サウンドトラックは2枚組で収録されているが、未収録の曲もすくなくない。

いざないの森の往路で流れるのがこの曲である。物語開始直後に訪れる最初のステージで、森そのものの景観は仄暗くやや不気味な空気が漂っているが、この曲はそんな陰気さをものともしない晴れやかな躍動感に満ちている。イントロから太鼓、笛、ラッパの濃密なアンサンブルで、これから始まる冒険への期待感を膨らませてくれる。12秒頃で6連オーケストラヒットを鳴らしてテンションを高めた後、メインメロディーが入って伸びやかな演奏を披露する。中~高音域を担って華やかに響く主旋律と、低音域を担って分厚く響く伴奏の間に、25秒あたりから中~低音域を推移して旋律の流れを支えるパートを加えることで、バランスがよく聴き応えのある印象を与える。1分手前のサビ直前では、オーケストラヒットを用いて勢いを整えるだけでなく、サビのフレーズを先取りするように56~58秒にて笛が高らかに響くことによって、気持ち良く後続のメロディーに繋がっていく。サビはさながらマーチのように愉しげに盛り上がり、聴いているとおのずと力が湧いてくるような気分にさせてくれる。冒険の始まり、伝説の始まりを強く印象付ける一曲である。

この曲を紹介してほしいというリクエストをいただきました。使用場面は森ですが、立ち位置としてはメインテーマで、フレーズがいろんな曲やジングルに組み込まれてますね。エンディングでは『天空の彼方へ』という尺を追加したバージョンが流れますので、そちらもあわせてお聴きください。

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