VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1252 『どきどき インザスカイ』(松本大輔/むちむちポーク!/AC)

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ケイブがおくる縦スクロールシューティング・むちむちポーク!より、

松本大輔作曲、『どきどき インザスカイ』。1面で流れます。

ケイブ製シューティングのなかでも一際イロモノ感の強い作風で知られる本作。焼き肉屋で牛肉を食べていた女子学生・桃と一久青とらふては、豚肉こそ至高と考えるイベリコ星のポークフィレ将軍の怒りを買って無理やり豚人間に変えられてしまい、地球の全人類をブタ化させる作戦に駆り出されることになる。全5面構成でランクシステム(プレイヤーの立ち回りに応じて難易度が変動する要素)が搭載された弾幕系シューティングである。自機は三人とも女の子で一見すると萌え系の絵柄だが、むっちりしたウェットスーツに豚耳というニッチなデザインで異彩を放っている。ゲーム性そのものは噛み応えと遊びやすさを両立していて、3ボタンで通常弾・特殊攻撃(ラードアタックまたは貫通弾)・ボムを使い分けて進めていく。敵を倒すとブートンという豚が現れ、回収することでラードゲージが溜まり、ゲージ満タンで機体ごとに異なる強力なラードアタックを放てるようになり、ラードアタック時は確定で得点アイテムが入手できる仕組みである。これにより殲滅と稼ぎの爽快感を同時に味わうことができる。総じてしっかりと厚みのある仕上がりとなっている。後にXbox360向けにピンクスゥイーツカップリング移植された。

本作の音楽を担当するのは齊藤尚寛氏、内藤那津子氏、まさKING氏、松本大輔氏、宮本武氏。それぞれスタッフロールではNaohiro.Sightow、Natsuko.Naitou、MASA-KING、Daisuke.Matsumoto、Kizakuraと表記されている。いずれも当時あるいは現在もケイブに所属する作曲家で、本作と似た系譜の(かつ移植時のカップリング対象になった)作品であるピンクスゥイーツでの作曲経験がある。本作の音楽は、ゲーム全体に漂う奇抜な雰囲気とは裏腹に、シンセやパーカッションを駆使した親しみやすい路線を取っている。ステージ曲はポップやファンクなどの明るめな曲調を、戦闘曲はテクノなどの激しめな曲調を楽しめる。サウンドトラックにはイメージソングやジングル等も含めて収録されている。

1面で流れるのがこの曲である。主人公たちの地元である福多塚町を舞台としたステージで、風景そのものは特に変哲のない田舎町だが、侵攻を阻む大量の防衛兵器が設置されている。舞台設定や状況のカオスさ、ステージ背景と敵のギャップなど、ゲーム開始直後から諸々インパクトのある要素が揃っているが、そこであえて非常に明るく清々しい曲を充てることで、ツッコミどころをまとめて吹っ飛ばすような痛快な印象を与える。元気いっぱいなシンセリードの旋律に、かなり激しめだが重苦しさのないエレキギターの伴奏が絡み合うことで、猪突猛進な勢いを感じさせる。分かりやすいところで言えば20~22秒や28~31秒など、随所にラッパが甲高く鳴るパートを入れていて、それによって曲全体を貫く清々しいムードがますます強まっている。サビのエネルギッシュな響きも印象的で、1分3秒頃でフレーズの締めの音を短く切った直後にドラムがドコドコ鳴ることで、次のループに備えて気持ち良く仕切り直してくれる。とことん活力に満ちた一曲である。

ゲーム名に倣って曲名も基本的に「二文字反復のひらがな+カタカナ」で統一されていて、こだわりが感じられますね。