VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1378 『崩壊の都市』(酒井省吾/ヘラクレスの栄光IV 神々からの贈り物/SFC)

www.youtube.com

データイーストがおくるRPGヘラクレスの栄光より、

酒井省吾作曲、4の『崩壊の都市』。トロイで流れます。

ギリシャ神話を題材にしたRPGヘラクレスの栄光シリーズのナンバリング4作目にあたる本作。9000年前のアトランティス滅亡の折に肉体を失い魂のみの存在となった兵士の主人公は、今の世に迫る人類の危機の原因を探るべく、運命の女神の手引きによって生物に乗り移る力を与えられて旅立つことになる。神話を下敷きにした壮大で波乱万丈な物語や、癖と魅力のあるキャラと台詞回しをはじめとするシリーズの長所を受け継ぎつつ、本作ではシステムやグラフィックまわりが一段とブラッシュアップされている。特筆すべきは物語の根幹に関わるトランスファー(乗り移り)システムで、ただの犬から王に至るまで100体以上の生物に憑依することができる。これは探索を進めるうえでも戦闘をおこなううえでも有用で、乗り移り先に応じて周囲からの反応が変わったり、個別のステータスや特技が用意されていたりする。同じ身体で戦い続けると経験値とは別にフィットネスポイントが溜まり、より能力を引き出せるようになる。他にも本作の特徴として昼夜や天気の概念があるほか、マップの視点を調整できたり、戦闘の掛け声を自分好みにカスタマイズできたり、細かいところまでコマンドが充実していたり、クリア後要素が備えられていたりする点も印象深い。総じて精緻にまとめられた仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは安藤美穂子氏、岩崎正明氏、酒井省吾氏、清水絵美氏、濱田誠一氏、桃井聖司氏。スタッフロールのサウンド欄では安藤氏はSEILAH名義、岩崎氏はKOREMASA名義、濱田氏はATOMIC HANADA名義でクレジットされている。また、サウンド欄にはZ. YAMANAKAこと山仲清二氏と、N'GJA MIURAこと三浦孝史氏の名前も確認できるが、作曲には携わっていないようである。いずれも当時データイーストに所属していた作曲家である。このうち岩崎氏、酒井氏、濱田氏は2から、桃井氏は3からシリーズの作曲に参加している。本作ではシリーズ恒例の悲壮感のあるメロディアスなサウンドを踏襲しつつ、より打楽器の響きに深みを与えたり管弦楽器を重層的に鳴らしたりしてオーケストラの迫力を強めている。また、合成音声風の音色を用いて疑似的に歌を再現しているものもある。サウンドトラックについては、本作単体のものに加えてシリーズの楽曲を網羅したものが存在する。

トロイで流れるのがこの曲である。トロイの町は荒れていて家屋は壊れているが、人々は永遠の命をもらえると信じてせっせと天高く伸びる塔を建設している。物語後半に訪れ、重要な人物との再会イベントがある場所で、狂気的とまではいかないが何か妙な雰囲気が漂っている。そうした様子を表現するにあたって、この曲は地中海の民族舞曲を思わせるような中毒性のある響きを帯びている。トライアングルとハープの優雅なイントロで始まり、3秒頃からカスタネットが入るのと同時に主旋律としてクラリネットのような音色が加わる。11秒で後ろから追うようにして低音が奏でられ、主旋律と重なって美しくも物悲しげなハーモニーを生み出す。続く22秒ではまたもや後ろから追うように、今度は高音のフィドルで主旋律と入れ替わって旋律が紡がれる。しばらくカスタネットのみだったが、ここにきてタンバリンやトライアングルも加わるようになり、踊るように軽やかだが今にも崩れそうな脆さを湛えながら盛り上げていく。ループ直前の39~42秒ではうんとテンポを落とすが、すぐまた仕切り直して再始動する。異様な哀愁を感じさせる一曲である。

崩壊の都市という割には不思議と活気がある感触が、曲を通して非常に伝わってきますね。ちなみにくだんの塔は、ダンジョンではない町の建造物なので、塔のなかでもこの曲が流れます。