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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1379 『めがとんポイズン』(田辺裕詞/Dewy's Adventure 水精デューイの大冒険!!/Wii)

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コナミがおくる環境ヘンシンアクション・水精デューイの大冒険より、

田辺裕詞作曲、『めがとんポイズン』。キャタピロン戦で流れます。

ElebitsのスタッフによるWii向けの新作アクションとして登場した本作。水と緑と七色の樹の加護に満ちた世界を舞台に、樹から生まれた水の妖精・デューイは、黒い水で世界を汚すドンヘドロン大王に対抗すべく冒険することになる。全7ステージ・一部を除き各4アクト構成の3Dアクションで、絵本のような温かみのある世界観と、Wiiリモコン特有の操作感を取り入れたゲーム性が特徴である。主人公が水の精霊であるため、通常の液体の姿に加え、任意に温度を調節してくも(気体)やこおり(固体)に変化させられる。これを活かして、くもになって浮いたり雷雲で敵をやっつけたり、こおりになって守りを固めたり氷の足場を造ったりしながら、ステージの様々なギミックを攻略していく。温度変化の他に、Wiiリモコンを左右に揺らしてステージに地震を起こしたり、上下に扇いで風を起こしたりすることができ、仕掛けを解くうえでも敵を翻弄するうえでも有効な手段となる。ストーリーモード以外にもステージを自作できるエディットモードや、最大4人まで一緒に遊べるマルチプレイ、写真撮影、寄り道のコレクション要素なども存在する。操作に癖があって若干の慣れを要するが、メルヘンチックで独創的な作風を味わえる仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは桐岡麻季氏と田辺裕詞氏。いずれも当時コナミに所属していた作曲家である。また、主題歌はCarole Blackschleger氏が歌う英語の童歌風の曲に仕上がっている。本作ではほのぼの可愛らしい雰囲気に寄り添うように、明るいシンセやピアノ、木琴などをふんだんに用いた楽曲が揃っているが、全体的な傾向はキュートよりもスタイリッシュ寄りなテクノやチルアウト系と言える。特にボス戦はなかなか激しめなドラムンベースやエクスペリメンタル感が漂っていて、必ずしもメルヘンチックな舞台設定に囚われないサウンドを楽しむことができる。サウンドトラックには主題歌や各種ジングル、ボーナストラック付きで収録されている。

キャタピロン戦で流れるのがこの曲である。ヌーヌーどうくつのボスである空飛ぶイモムシで、鋭いキバと毒液を散らす攻撃を特徴とする。周囲に点在するウツボカズラのような隠れ蓑に時折身を隠す。そうしたなか、曲冒頭は怪しげな効果音を鳴らして焦燥感を煽り、3秒から派手に本格始動する。その曲調はガバのようなマッシブでアグレッシブな印象があり、15秒からはギターの重低音も加えて分厚く破壊的な音色を奏でる。一方で、18~21秒や24~26秒には活きの良いマリンバのフレーズを取り入れることで、ただ破壊的なだけではない愛嬌を感じさせる。その後しばらくはギターの轟音に包まれるが、38秒からビロビロと小刻みに音階を行き来して予測不能な旋律を奏で出す。さらに51秒からはシンセストリングスを交えてドラマチックな色味が増し、ますます取り返しのつかない異様な空気感が充満するが、1分1~3秒で震動するような調子でマリンバを鳴らすと間もなくループに突入する。ハードコアだけどチャーミングな一曲である。

良い意味で作風と温度差がある感じで、曲名も絶妙に似合ってますね。