VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1380 『STAGE 1』(板村直樹/ラビオレプススペシャル/PCE)

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ビデオシステムがおくるシューティング・ラビオレプスより、

板村直樹作曲、スペシャルの『STAGE 1』(仮称)。1面で流れます。

ビデオシステム初期のアーケード用横スクロールシューティング・ラビオレプスのPCエンジン向けのアレンジ移植にあたる本作。平和な王国に突如異星人が襲来し、王と王女姉妹がさらわれてしまったことを受け、うさぎ型の王家特殊戦闘メカ・USAGIが出動することになる。アーケード版原作は全12面だったが、本作では全6面に再構成されている。同じシールド3個のライフ制でも本作はシールドの耐久力が下がったほか、2人同時プレイ非対応になる、一部サービスカットが差し替えられる、などの変更がある。ただ、原作のキュートでシュールな世界観と、慣れないうちは強気に感じられる難易度設計は健在である。自機は可愛いうさぎ、敵は浮遊する人面、偉くリアルな象さん、てるてる坊主など、全体的に珍妙なセンスが漂っている。攻撃手段は原作同様3種類で、自動連射で低威力の通常弾、高威力の近接パンチ、道中でストックを溜める有限の誘導ミサイルを使い分けながら進めていく。敵は固めであるため、効率よく削るには接近戦を仕掛けつつミサイルを有効活用するのが肝だが、被弾のリスクやミサイル残数、その他初見殺し的な配置にも気を配る必要がある。総じて移植に際して構成を調整しつつ、原作らしいプレイ感が保たれた仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは板村直樹氏。当時ビデオシステムに所属していた作曲家である。アーケード版の作曲は石田安俊氏と奥田健司氏が担当していたが、移植に際して楽曲は全曲差し替えられて板村氏が単独で効果音も含めて手がけている。SF色強めでメタリックな印象を色濃く纏っていた原作の楽曲群と比べて、本作ではPCエンジンらしい丸みのある音源を駆使したキャッチーなサウンドが揃っている。音色の響きが変わり、曲が丸ごと差し替えられても、その根底にあるノリと活力は変わらず受け継がれているため、ゲームの雰囲気にうまく融け込んでいる。サウンドトラックについては、アーケード音源のものは存在するものの、PCエンジン版の楽曲を収録したものは未発売のため、曲名は便宜上の仮称とする。

1面で流れるのがこの曲である。異星人の宇宙船を追って暗黒の宇宙空間を進み、やがて船内に侵入してSF感満点な防衛機構と戦うことになる。イントロから一定のリズム感で粘り強く音色を反復することで、まるで凱旋行進曲のような第一印象を植え付ける。音色そのものは柔らかいが、非常にはっきりと拍を刻み、4~5秒や8~10秒でみられるように高音をうまく散りばめているため、実際に受け取る印象にはヤワなところがなく、むしろ分厚く凛々しく立派な印象を与える。特に22秒以降でぐんぐん音階を上っていくさまは清々しい疾走感を帯びていて、人質救援に赴くUSAGIの勇姿をありありと焼き付けてくれる。1ループ28秒で尺は短いが、元々行進曲然とした曲調であり、繰り返せば繰り返すほどに勢力が増していくような雰囲気がある。いざ出発するぞという気分を思い切り後押しする一曲である。

聴いていると気持ち良くなる曲ですね。