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#1273 『笹に落つる村雨の霧』(岩崎健一郎・越川正登/影之伝説 -THE LEGEND OF KAGE 2-/NDS)

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タイトーがおくる忍者アクション・影の伝説より、

岩崎健一郎・越川正登作曲、2の『笹に落つる村雨の霧』。

3面「火輪 闇夜の舞」で流れます。

1985年稼働のアーケード用アクション・影の伝説リバイバル作品としてDS向けに登場した本作。江戸時代を舞台に、雪草妖四郎率いる魔性の勢力にさらわれた霧姫を救出すべく、忍者の青年・影もしくはくノ一の少女・千尋が旅立つことになる。ステージクリア型の2Dサイドビューアクションで、主人公別で各13面から成る。影は機動力重視で武器は刀と手裏剣、千尋は火力重視で武器は鎖鎌と分銅で、両者の性能が異なるのみならず展開する物語も若干異なる。従来の残機制からライフ制に変更された点や、絵柄(特にキャラデザイン)が現代風にレタッチされた点など、前作と比べて作風が刷新された部分もすくなくない。一方で、前作の特色である跳躍力抜群のジャンプや空中戦の駆け引き、スピーディーなゲーム展開は健在で、DSの2画面を用いて縦横両方向に広がりのある攻防を楽しめる。また、自分好みに忍術の組み合わせをカスタマイズできる要素もあり、遊びの幅が広まった。モダンなテイストを取り入れつつ、往年のアクションらしいクラシックな仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは岩崎健一郎氏と越川正登氏。越川氏は担当例がすくないようだが、岩崎氏は本作の開発元であるランカースの作品によく携わっている作曲家である。前作は当時タイトーZUNTATAに所属していた小倉久佳氏が作曲していて、彼が作曲したBGMをベースにしたアレンジ曲が本作においても収録されている。本作の音楽は、和風でアップテンポですこしレトロ感のある楽曲が揃っている。和太鼓や尺八といったいかにもな楽器に加えて、エレキギターやオーケストラヒットなどを利かせたインパクトあふれるサウンドを堪能することができる。サウンドトラックは未発売だが、作中に曲名付きのサウンドテストが存在する。

3面「火輪 闇夜の舞」で流れるのがこの曲である。霧が漂う笹藪を舞台としたステージで、夜の闇、鬱蒼と茂る緑、立ち込める霧の組み合わせが独特な風情を醸している。イントロから激しく打ち鳴らされるティンパニ、唸るように響くエレキギター、歯切れ良く掻き鳴らされる三味線、そしてマリンバの速弾きを重ね合わせることで、冒頭一秒足らずで強く心を掴まれるような絶妙な響きを生む。13秒頃からメインメロディーが入り、同じ音程で被せるようにして笛の音を取り入れることによって、聴いていて気持ち良く感じられる音の余韻を残す。28秒からはウーアーと唄うコーラスが加わるようになり、和風な雰囲気のなかにスタイリッシュでメランコリックな色合いがうまく融合する。冒頭から休みなく奏でられ続けたマリンバが42秒で一旦抜けると、一気にダンスミュージックっぽい印象を纏うようになる。ややあって1分7秒頃で小さめの音量から始動してマリンバが再度加わると、もう間もなくループに突入する。癖になる小気味良さがある一曲である。

いろんなゲームをやっていろんな曲を聴くなかで、ときどき個人的に大当たりを引いたと感じるものがありますが、これはその好例です。ちなみに『夜美城』もすごくいいです、前作の『BGM1「走!」』のアレンジですが、原曲の魅力の引き出し方とアレンジのかけ方のバランスが天晴です。あわせてどうぞ。

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