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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1411 『Thuwing』(高萩英樹/サイドバイサイド2 エボルツィオーネ/AC)

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タイトーがおくるレースゲーム・サイドバイサイドより、

高萩英樹作曲、2の『Thuwing』。中級コースで流れます。

当時としては先駆的だった実名の車が登場する点が特徴のサイドバイサイドシリーズのナンバリング2作目にあたる本作。初級から超上級、さらには隠しの超弩級コースに至るまで、好きな車を選んで走り抜けることになる。運転席、ハンドル、アクセル・ブレーキ、シフトレバー等、前作同様に一通りの機構を備えた大型筐体のレースゲームである。コースは新調されているが相変わらず峠道を中心としたラインナップで、車種は日産・トヨタマツダ・ホンダに加えて新たに三菱とスバルを取り入れた6メーカー10(+隠し2)種類から成る。登場する車の多くは他社製のエアロを装着するなど前作ではあまりみられなかった改造が施されている。また、新モードとしてCPUが一切登場しない真剣勝負が搭載され、一人でタイムアタックに挑んだり、プレイヤー同士で対戦したりすることができる。総じて走り屋気分を追体験できる仕上がりとなっている。後にアッパーバージョンのRRが稼働したほか、前作とセットでPS向けに移植された。

本作の音楽を担当するのは高萩英樹氏。当時タイトーに所属していた作曲家である。シリーズの作曲を手がけるのは本作が初めてで、本シリーズの後継作にあたるバトルギアシリーズでも一部の作品に携わったり、本作の楽曲が流用・リミックスされたりしている。本作ではギターやキーボードをギュンギュン鳴らした鮮やかなバンドサウンドが揃っている。前作同様、各コースにデフォルトBGMが設定されているが、本作ではコース選択時にBGMを選べるようにもなり、より自分好みのレース体験を追求することができる。サウンドトラックについては、稼働時期が近い電車でGO!と抱き合わせで収録されている。

中級コース「弥生」のデフォルトBGMに割り当てられているのがこの曲である。夕暮れの碓氷峠をモチーフとしたコースで、道幅の狭い高速コーナーを特徴とする。手始めにハープシコードをリズミカルに鳴らしてバロック風の華麗な第一印象を植え付ける。8秒からクラビネットが加わり、15秒から打楽器が本格的に参戦すると、華麗であることには変わりないがバロック感が薄れてモダンなグルーヴが漂うようになる。さらに進んで30秒過ぎからは激しくエネルギッシュなギターが主旋律を担い、ファンク・ロックに通ずるような曲調へと変わっていく。ギターフレーズが一段落つく47秒あたりから再びハープシコードクラビネットの存在感が増すが、また1分2秒頃からギターが勢いを盛り返して、今度は吼えるような高音を駆使したり即興風のメロディーを奏でたりして長めに盛り上げる。1分40秒には潔く曲を締めて有終の美を飾り、ループの際は頭から繰り返すことになる。最終的に第一印象とは毛色が異なる雰囲気に仕上がっていて、走り進めるうちに興が乗っていく感覚を味わえる一曲である。

曲名はサントラ準拠ですが、意図的か誤植か不明ですがthawingで雪融けの意味です。バトルギア2に収録された際は『Thuwing ("Side by Side 2" Complete mix)』という曲名で、楽器の響きが変わりましたがかなり原曲に忠実な感じです。あわせてどうぞ。

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