足立賢明・阿部学作編曲、4の『Autumn Breeze』。超上級コースで流れます。
リアルな挙動とタイムアタックの熱さを押し出したバトルギアシリーズのナンバリング4作目にあたる本作。超初級から超弩級まで、国内のみならず地中海の市街地や欧州の峠道などを舞台とする7つのコースでレースを繰り広げることになる。運転座席を模した赤と黒のシートにロールケージが装着された筐体デザインが特徴である。収録車種は主に出力を目安にA~Dまでクラス分けされた30種で、シリーズ初となる海外車種(ルノー、プジョー、フォード、BMWのミニ、フォルクスワーゲン、シトロエン)が登場した。本作ではグラフィックはもちろん、操作感やセットアップの仕様など、各方面で今まで以上に本物らしさを追求していて、重量感のある精密な車捌きと充実したカスタマイズ要素を楽しめる。BG4ガレージという会員制のシステムを介し、ゲーム内通貨を獲得・消費してパーツごとに様々なアップグレードを施し、自分だけの愛車を登録することができる。また、前作に引き続きネットワーク機能で全国のドライバーとランキングで競い合ったり、走行リプレイを閲覧したりすることができた(現在はサービス終了済み)。収録車種を中心に前作からボリュームダウンしていたり、操作に慣れを要する部分があったりするが、総じて重厚かつ堅牢な仕上がりとなっている。後に追加要素を加えた完全版のTunedが稼働開始した。
本作の音楽を担当するのは足立賢明氏と阿部学氏。足立氏はフリーランスの作曲家で、ゲーム音楽方面ではSCE・SIE関連の作品を多く手がけることで知られる。阿部氏は主にバンドやライブサポートの方面で活動しているギタリストである。いずれもバトルギアシリーズの作曲に携わるのは初めてで、Tunedでも引き続き両名とも複数の楽曲を書き下ろしている。シリーズおなじみの鮮やかなロックサウンドを軸に、本作ではファンクやフュージョンのエッセンスを大胆に取り入れていて、ギターと並んでサックスなどの金管楽器の音色がよく目立つ。サウンドトラックにはTunedの追加曲や過去作からのボーナストラックも含めて収録されている。
超上級コースで流れるのがこの曲である。超上級は7段階ある難易度のうちの5段階目にあたり、コースは秋の妙義山をモチーフにしている。道幅が狭くコーナーが連続するため、美しい紅葉や鳥居のある景色に見惚れる暇はあまりないが、コーナリングのコツを掴めばリズムを刻むような感覚で軽快に走り抜けられる。そうしたなか、手始めにギターがソリッドなリフを掻き鳴らし、そのまま40秒間ほど粘り強く反復し続ける。41秒から狙い澄ましたようにテナーサックスとクラヴィネットと思しき組み合わせによる艶やかで気持ち良い音色が奏でられ始めると、一気にフュージョンらしい印象を纏うようになる。56秒では再びギターが目立ち出すが、合間合間でサックスが興を添えることでグルーヴィーなテンションを保ち続ける。とりわけ印象深いのが1分17~31秒でギターが即興風のフレーズを披露した直後、バトンを受け継ぐように1分32~44秒でサックスが即興風に演奏するくだりで、コース上で代わる代わる出現するコーナーと相まって実に見事な一体感を生み出している。その後、2分ぴったりでループに突入する。無尽蔵にやる気が湧いてくる一曲である。
たまらない格好良さですね。もしできることなら、自分の葬儀のときにでも唐突に会場のスピーカーをジャックしてこの曲を流したいです。