高濱祐輔作曲、2の『大海を越えて』。船で移動する際に流れます。
ギリシャ神話を題材にしたRPG・ヘラクレスの栄光シリーズの2作目にあたる本作。前作のヘラクレスの活躍により平和を享受してきた世界を舞台に、ナナの街に暮らす主人公は、女王の招集に応じて闇の魔王を退治することになる。前作の奇を衒った作風から一転、一人旅ではなく仲間を連れて冒険するパーティ制に変更、肉弾戦一辺倒ではなく主人公も魔法を使えるようになり、グラフィック全般が親しみやすいデフォルメ調に変わるなど、だいぶオーソドックスなRPGらしい雰囲気になった。一方で、神話モチーフならではのドラマチックなシナリオやピーキーなゲームバランスは前作同様に健在である。総じてやや地味だが王道寄りで手堅くまとまった仕上がりとなっている。
本作の音楽を担当するのは岩崎正明氏、酒井省吾氏、鈴木雄司氏、高濱祐輔氏、濱田誠一氏、三浦孝史氏。いずれも当時データイーストに所属していた作曲家で、このうち酒井氏は本作のサウンドプロデューサーを務めている。前作から作曲家を一新し、なかでも酒井氏や濱田氏は以降もシリーズに携わることになる。効果音の制作も一部手がけた岩崎氏と、本作がデビュー作の高濱氏は、当時アルバイトだったらしく、作曲陣が大所帯なのは「なるべく多くの人に作曲の経験を積んでもらおう」という酒井氏の考えによるものだという。本作では壮大で悲劇的な世界観を彩るにあたって、耳馴染みしやすいメロディアスな楽曲が揃っている。サウンドトラックについては、本作単体のものに加えてシリーズの楽曲を網羅したものも存在する。
船に乗って移動する際に流れるのがこの曲である。イントロからぐんぐん上昇していく爽快な音階が印象的で、最初の2秒足らずで一気に船出に伴うワクワクした気分を存分に駆り立てる。軽快なビートの上を明るく楽しく開放的な主旋律が走り抜け、その裏で絶えず16分音符の小刻みな音色が響き渡ることで、音数がすくなくても不足感のないキャッチーなメロディーを紡いでいく。童心に返ってどこへでも行きたくなるような、真っすぐで瑞々しい魅力に満ちた一曲である。
船で新しい世界を旅することへの、すごく率直な喜びのようなものが伝わってきて素敵ですね。