VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1377 『Muttropolis, a City with the Zoomies』(Jack Yeates/Pupperazzi/PC・XOne・XX|S)

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Sundae Monthがおくるワンちゃん撮影ゲーム・Pupperazziより、

Jack Yeates作曲、『Muttropolis, a City with the Zoomies』。

Muttropolis(ザッシュロポリス)で流れます。

アメリカのインディーゲームスタジオ・Sundae Monthが開発した本作。プレイヤーは二足歩行のカメラであり、犬だらけの島で様々な犬を撮影して満喫することになる。一人称視点の箱庭系の写真撮影シムで、トゥーン調の質素で愉快な世界観のもと、ひたすら犬を撮ることに焦点を当てている。犬種は柴犬、プードル、テリアなど一通り揃っていて、探索範囲は海辺や灯台といった島ならではのスポットはもちろん、住宅街やゲーセン、岩場や森などもある。この島の犬は自己顕示欲があり、特定のアングルやレンズで、あるいは特定の動作を撮ってほしい、などとのたまう彼らの要望に応えながら進めていく。棒きれを投げれば拾ってくれるし、フリスビーで遊ばせたり、スケボーに乗ったり、音楽をかけて躍らせたりして、様々なシチュエーションで様々な表情や仕草を楽しむことができる。また、犬を着せ替えたり、なんとなく撫でたり、自撮りしたりする機能もある。撮った写真は作中のネットに投稿して反応や評価を得ることができ、フォロワーが増えればさらなる要望が届くし、アイテムを購入すればより撮影の自由度が上がる。特にゲーム性の奥深さがあるわけではないが、犬に囲まれる幸福感を味わえる仕上がりとなっている。後にスイッチに移植された。

本作の音楽を担当するのはJack Yeates氏。Sundae Monthの一員であるイギリス在住の作曲家で、blueskyblue名義でも知られる。Sundae Month製の作品にはほぼ欠かさず携わっていて、本作では他一名と共同で効果音も兼任している。本作では長閑で陽気でちょっぴりコミカルな作風に合わせて、楽曲はノスタルジックなイージーリスニング系やエレクトロポップ系のものを中心としている。ゲームの作品名が子犬(puppy)とパパラッチ(paparazzi)を掛けた造語であることにちなんで、作中の地名が遊び心に富んでいるほか、曲名にもパロディや言葉遊びが仕込まれている。サウンドトラックは各種デジタルストアで配信されている。

Muttropolis、日本語版だとザッシュロポリスで流れるのがこの曲である。島のなかでも栄えている都市部で、建物が並び自動車が行き交うヨーロピアンな町並みと、池のある公園が特徴である。ぽんぽんとはじくように響くプラック系の音色で始まり、そこにチッチッと小刻みに鳴るハイハットが付き添うことで、ほんわかとしつつ小気味よい聴き心地を生み出す。10秒から主旋律が入り、20秒からさらに音色が増えるが、いずれも短音で区切った鳴らし方で溌溂とした響きを帯びている。長めに持続する音色は、32秒からの笛と、それと入れ替わるように響く眩しげな音色、そして51秒以降のパッド音など、限られた場面でしか用いられず、それが曲全体の躍動感あふれる雰囲気づくりに寄与している。似たようなフレーズを繰り返すなかでも、1分22秒では煌びやかなムードが強まるなど、好奇心をくすぐってくれるような変化が見受けられる。また、遡れば14~15秒や25秒、29~30秒など、節目節目におどけた効果音が配置されていて、こうしたささやかな音色もまた、曲を貫く愉しい雰囲気を形作るのに一役買っている。とても可愛らしい一曲である。

Muttropolisはmutt(雑種)+メトロポリス、zoomiesは犬が突然あちこち元気よく走り回る現象のことですので、曲だけでなく曲名もなんか可愛らしいですね。