VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1376 『偶数面BGM』(林克洋/阿修羅/Mk3)

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セガがおくるアクションシューティング・阿修羅より、

林克洋作曲、『偶数面BGM』(『偶数ラウンドBGM』とも)。偶数面で流れます。

ゲリラ戦士の活躍を描くアクションシューティング作品として登場した本作。敵の捕虜となってしまった兵士たちを救出すべく、阿修羅とその相棒・毘沙門は敵地へ乗り込むことになる。全6面構成、2人同時プレイに対応した縦方向・任意スクロールタイプのオーソドックスなゲーム性が特徴で、一発で残機が減る仕組みである。攻撃手段は主に2連射のM-60(機関銃)と弾数有限の強力なボンバーアローで、特に後者は道中の捕虜小屋やステージ最後のバリケードを破壊するのにも用いる。敵を一定数倒すか捕虜小屋を壊すとスコアに加えてパワーアップアイテムを獲得でき、これを通じて武器の性能を強化したり弾数を補充できたりする。全体的に敵味方ともにキャラの動きも弾速も遅く、移動は後方や斜めを含む8方向に対応しているものの、攻撃は後方には撃てない(代わりに後退しながら前方の敵を攻撃することができる)ため、うまく立ち回るには慣れを要する。じっくり粘り強く遊べる仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは林克洋氏。スタッフロールではWOOPER KATSU名義でクレジットされている。当時セガに所属していた作曲家である。本作ではジャングルや沼地、敵基地など、様々なロケーションで繰り広げられる過酷なゲリラ戦を彩るにあたって、戦場の怒りと悲しみを表現したような悲壮でメロディアスなサウンドが揃っている。低音を小刻みに鳴らしたり音色を細かく散りばめたりすることで聴きやすいリズム感を整えている。サウンドトラックについては、一部楽曲がセガコンのベスト盤に収録されたことがあるほか、セガハード30周年記念盤に全曲収録された。両者で曲名の表記が微妙に異なるため、ここでは前者の表記に倣うものとする。

偶数面で流れるのがこの曲である。弾けるような勢いがある奇数面BGMと比較してテンポ自体はそう変わらないが、こちらはドラムを刻む間隔が広めなため、体感的にすこし落ち着いているような感触がある。中低音域から始まり、整然としたリズム感を維持しつつ6秒頃から甲高い高音を鳴らすことで、盤石な足取りで行軍する様子と、戦場に猛る闘志を印象付ける。主旋律の裏で、たとえば11~13秒であったり23~25秒であったり、26秒以降のフレーズ全般にも当てはまるが、別の副旋律が後追いで響く点が特徴的である。低音と高音をときに同時に、ときに代わる代わる鳴らすことで、メロディーラインの深みと哀愁を引き立たせている。37秒で一際高く澄んだ音色が鳴ると、そこで1ループが完結しても違和感がないくらい綺麗な響きを帯びているが、まだ続きがある。実際に完結するのは、さながら引き潮のように仕切り直す50~56秒のフレーズを挟んでからである。バランスよくメリハリよく昂揚感をそそる一曲である。

この曲を紹介してほしいというリクエストをいただきました。この曲はセガ公認のカバーがあるようで、60~70年代あたりのハードロック風で『NEVER TO RETURN』という題で編曲されてます(編曲は伊藤心太郎さん)。『奇数面BGM』と『NEVER TO RETURN』、あわせてどうぞ。

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