VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1375 『STAGE 7』(相原隆行/ワンピースマンション/PS)

www.youtube.com

カプコンがおくるマンション管理ゲーム・ワンピースマンションより、

相原隆行作曲、『STAGE 7』。7面で流れます。

マンション管理をテーマにした異色作として登場した本作。不思議な住人が暮らすワンピースマンションを舞台に、管理人のポルポは住人同士のトラブルや刺客として送り込まれる犯罪者どもに対処しつつ住居を発展させることになる。マンション管理と一口に言っても経営シムとは異なり、クリア条件に沿うように部屋の入替、設備の増築、問題の処理などを同時並行で進めるパズル兼リアルタイムストラテジー的なつくりを特徴とする。住人は宇宙人、ロボット、忍者なんでもありの約50人いて、各々良くも悪くも特殊な性能を持つうえに、互いに影響し合う存在として近隣住人に癒しかストレスを与える。ストレスが限界まで溜まると部屋を爆発させて退去してしまう(=家賃収入が減るし罰金を払わされるし、住人によっては周りの部屋も巻き添えにする)ため、住人同士の相性を見極めて適度に癒しを供給する必要がある。厄介なのは犯罪5という定期的に送り込まれるお邪魔住人で、奴らの部屋は入れ替えられないが、放置すれば周囲にストレスを巻き散らして放火や窃盗などの悪さを働く。奴らに対しては正規の住人をうまく配置して積極的にストレスを与えて追い出すか、マンション構造を工夫して相互干渉しづらい設計にするのが定石となる。全体のボリュームは小粒だが、コミカルな作風とせわしく奥深いゲーム性を楽しめる仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは相原隆行氏。複数のゲームメーカーを転々としている作曲家である。氏にとって本作は、独立して個人スタジオのスタジオカルナバル設立後の初期の担当作品の一つである。本作には全7面構成のストーリーモードと、ゲームオーバーになるまで続けるエンドレスモードがあり、それぞれのモードを彩る陽気で味わい深いサウンドが揃っている。明るめのテクノサウンドトイポップ系の楽曲を中心としつつ、集中力と戦略性を問われる状況を想定して、じりじりと中毒性の高いフレーズを反復し続けるような曲調のものが多い。サウンドトラックは未発売のため、曲名は便宜上の仮称とする。

STAGE 7で流れるのがこの曲である。ストーリーモードの最終面で、誰彼構わずストレスを与えやすい住人が多く入居し、犯罪5が多く出現する、いかにもこれまでの集大成にふさわしいカオス感が漂っている。そうしたなか、この曲はむしろ理知的で計算尽くされたような雰囲気がある。その徹底した曲調からは、まるで自分のマンションではなくハイテク文明の基地内部か何かを連想させる。無機質にピコピコと鳴り続ける電子音に、21秒頃から顕著に響き出すハーモニカ風のお茶目なリード音が絡み合い、冷徹なようでほんのり温かみもあるような独特な空気を感じさせる。曲全体の印象はたしかに理知的で機械的だが、30秒あたりからシンセが明るく爽やかに響くさまは特に感性豊かで心くすぐられるような響きを帯びている。1分14秒から今度はすこし哀愁を滲ませるが、1分25~28秒でぐんぐん音階を上っていって快活な後味を残す。混沌の住居に自らの手腕で秩序をもたらしていくシチュエーションにぴったりな一曲である。

いろいろ考え抜いてパズルのピースをうまく嵌められたときの快感のようなものが、音を通して伝わってくる感じがしますね。心地良いです。