VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1305 『逢いたい時には』(石井祐子/デジモンワールド/PS)

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バンダイがおくる育成RPGデジモンワールドより、

石井祐子作曲、『逢いたい時には』。はじまりの街で流れます。

モンスター育成をテーマとするデジモンシリーズのうち、据置機向けの育成RPGの第1弾にあたる本作。デジタルモンスターと呼ばれるデジタル生命体の育成ゲームを得意とする主人公の少年は、ある日ゲームのなかの電脳空間へと吸い込まれ、当地で起こる異変にデジモンたちとともに立ち向かうことになる。物語の舞台は3Dで活き活きと表現されたファイル島という自然豊かな島で、デジモンの育成や冒険を通じて、拠点となる街を発展させていく。作中には時間の概念があり、デジモンを育てるにあたって食事や排せつ、睡眠といった生活サイクルを適切に回す必要があるほか、時間経過に応じてデジモンが成長して進化したり、やがて寿命を迎えたりすることになる。この育成要素と並行して、デジモンと一緒に島を探索し、敵と戦わせたり新たな仲間を見つけたりできる冒険要素が存在する。試行錯誤を重ねる育成シミュレーションとしての手堅さと、好奇心くすぐるRPGとしてのゲーム性の双方を味わうことができる秀作として、未だ根強い人気を持つ仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは石井祐子氏と山田耕司氏。当時、山田氏は開発元のベック(現・B.B.スタジオ)に所属していた作曲家で、石井氏はジェイワークスというテレビ系の音効会社に所属していたようである。本作では、日常を彩る明るく長閑なものから、探検気分を盛り上げる環境音寄りなBGM、デジタルというコンセプトに見合ったサイバーチックなものまで、作風と場面に沿った没入感あふれるサウンドが揃えられている。時間の概念に関連して昼夜で音楽が切り替わる仕様も搭載されている。サウンドトラックは通常盤のほか、next 0rderの初回封入特典として復刻版デジタルデータが配信されていた。

はじまりの街で流れるのがこの曲である。冒険の拠点となる場所で、はじめは閑静でいささか殺風景だが、物語を進めて発展させるにつれて賑やかさを増していく。夜間は寝静まるような調子の『星空のおやすみ』(同じく石井氏の作曲)が流れるが、昼間はこの素朴な優しさに満ちた曲が流れる。弦楽器を弓で演奏する代わりに指ではじくピチカート奏法を用いて丸みと弾みのある音色を響かせ、その上に10秒頃からフルートを載せることで、朗らかで質素でとても聴きやすい印象を形作る。16~20秒や27~31秒でみられるように、時折チリリと鳴る鉄琴の音色を配置することで、安穏とした曲調のなかにちょっとしたアクセントを加えている。特に46秒からは鉄琴の見せ場が増え始め、最も華やかになる54秒以降のパートでは笛と弦と一緒になって断続的に煌びやかな演奏を披露する。これら音程を伴う楽器のほかにも、打楽器やシェイカーの音が常に気味良く鳴り続けることで、曲全体に漂う適度に楽しく適度に癒される雰囲気に磨きをかけている。とても温和で親しみやすい一曲である。

この曲を紹介してほしいというリクエストをいただきました。アレンジで派生作のカードバトルのバージョン、next 0rderのバージョン(編曲は岸利至さんで、『逢いたい時には ver."ne0"』と『逢いたい時には jazz』の2種類)もあります。夜間の『星空のおやすみ』および各種アレンジもあわせてどうぞ。

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