石井祐子作曲、『星空のおやすみ』。はじまりの街の夜間に流れます。
携帯型ゲームとして展開していたデジモンシリーズのうち、据置機用の初のRPGとして登場した本作。デジタル生命体を育成するゲーム・デジタルモンスターを得意とする主人公の少年は、現実世界から突如ゲーム内の世界へと召喚され、ファイル島で起きる異変に立ち向かっていくことになる。時間の概念が取り入れられているのが特徴で、食事や排せつなどの面倒を見ながらデジモンを育成し、ときに進化したり、ときに寿命を迎えたりして成長を見守っていく。育てたデジモンと一緒にファイル島を冒険し、街を発展させつつ異変の原因を調査していくことになり、育成の奥深さとRPGの面白さが見事に両立した仕上がりとなっている。
本作の音楽を担当するのは石井祐子氏と山田耕司氏。このうち山田氏は開発元のベック(現・B.B.スタジオ)に所属していた作曲家で、石井氏については情報がすくないが、ジェイワークスというテレビ系の音効会社に在籍していた模様である。山田氏は以降のデジモンワールドシリーズでも引き続き作曲することになる。本作ではジャングルやサバンナ、氷雪地帯など、ファイル島各地の大自然を彩るバラエティ豊かな楽曲が揃っていて、昼夜で別々の曲があてがわれることで、奥行きのあるサウンドを生み出している。サウンドトラックは未使用曲も含めて収録されている。
はじまりの街はファイル島の中央に聳え立つムゲンマウンテンの麓にあるホームタウンで、冒険の拠点としてすこしずつ繁栄させていくことになるが、そこで夜の間に流れるのがこの曲である。昼に流れる『逢いたい時には』(同じく石井氏の作曲)の長閑な雰囲気を受け継ぎつつ、朗らかな印象を与えるそちらとは異なり、しんみり心に染みるような鉄琴の調べが特徴的で、穏やかな眠りへと誘うような心安らぐ静謐さに満ちている。大きく曲調が変わることなく、繰り返し素朴なフレーズを反復することで、さながら子守唄のような安楽と康寧をもたらしてくれる、そんな優しさあふれる一曲である。
曲名もぴったりですね。輝くお星さまも束の間の眠りにつくような、平和で温もりたっぷりの夜という感じです。『逢いたい時には』もあわせてどうぞ。
※追記 その後、昼に流れる『逢いたい時には』のほうも記事で紹介しました。