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#824 『追憶の青』(岩田匡治/追憶の青/iOS・And)

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Wright Flyer StudiosがおくるアクションRPG・追憶の青より、

岩田匡治作曲、『追憶の青』。タイトル画面で流れます。

消滅都市などで知られるWright Flyer Studiosのスマホ向けアプリとして、「運命に抗うアクションRPG」と称して登場した本作。海峡の島・ヴァインランドを舞台に、三勢力が激突する戦乱で、中立を謳う青の氏族の継承者である青年・フリオは戦渦に身を投じることになる。ステージクリア型のベルトスクロールアクションRPGの育成・成長要素が融合したゲーム性が特徴で、操作はスマホの片手縦持ちでおこない、フリックやタップで移動や攻撃を繰り出す仕組みとなっている。戦争と正義をテーマにした重厚で壮大な世界観のもと、4種類のジョブや武具のカスタマイズ、協力プレイなど、一通りファンタジーらしい要素が揃った仕上がりとなっている(現在はサービス終了済み)。

本作の音楽を担当するのは岩田匡治氏、工藤吉三氏、千葉梓氏、東原一輝氏の四名。現在も在籍している工藤氏を除き、いずれも当時、音楽制作会社ベイシスケイプに所属していた作曲家である。このうち岩田氏は作曲はもちろん、サウンドディレクションも手がけている。本作ではハイファンタジーの世界観に見合った格調高いシンフォニックサウンドを中心に、気品と迫力を兼ね備えた楽曲が取り揃えられている。サウンドトラックはサービス継続中も終了後もしばらく未発売だったが、後にデジタル配信限定で登場した。

本作のタイトル画面で流れるのがこの曲である。タイトルロゴと、青く光る刀身の剣を持ったフリオとその仲間たちの姿が描かれた静止画を、ストリングスとピアノの流麗なアンサンブルが情緒豊かに彩る。主旋律はどこまでもゆったりと、音の切れ目を感じさせないほど滑らかなレガートで奏でられ、追随する伴奏は自在に音階を行き来するような、天にも昇る美しいアルペジオが用いられることで、奥ゆかしくて落ち着きのある、鷹揚な印象を与える。32秒あたりからは1オクターブ上げて同じフレーズを反復し、ますます優雅な雰囲気に磨きをかける。ループに入るとオクターブが下がり、そこからまた上り下りを繰り返していく。聴けば聴くほど奥深さが増していくような一曲である。

タイトル曲の美しさもさることながら、チュートリアル(いきなりクライマックスのシーンで始まります)で流れるステージ曲の気合いの入り様が凄まじくて、良い意味で気圧されてしまうようなインパクトがあります。曲名の仰々しさも印象的な『偽りの大罪、悲しみの裁き』(工藤さんの作曲)もあわせてどうぞ。

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